- 自然気胸は、肺の表面に穴があいて空気が漏れ、その空気が胸の内側にたまって肺がしぼむ状態です。
- 気胸の治療では、空気を抜く処置をするか、経過を見るかを選ぶことがあります。
- 喫煙は、気胸の最初の発症にも再発にも関係し、吸わない人と比べた危険の差が大きい要因です。
- ヨガの呼吸法と気胸を結びつける報告としては、Johnson ほか(2004)の 1 例があります。
気胸とヨガ|肺に穴があいた後の再発の研究と、強い呼吸法を控える理由
多摩川の土手は風が強く、冬の午後は川面から冷たい空気が吹き上げてきます。風上に向かって大きく息を吸い込んだ瞬間、胸の片側がちくりと痛み、そのあと息が浅くなったまま戻らない。再開の時期は診た医師の指示に従い、呼吸の強さを落として戻すのが現実的です。 自然気胸を経験した人からは、この場面と一緒に「ヨガを続けてよいのか」と尋ねられることがあります。ヨガは呼吸を意識して動く練習なので、肺に穴があいたあとでは、何をどこまで戻してよいかが特に気になる運動です。
肺に穴があいてしぼんだあと、どのくらいで元に戻るのか、どんな動きが再発と関係するのかは、研究では数字にならない部分が多く残ります。ここでは、再発をまとめた研究と、ヨガの呼吸法について書かれた報告を並べ、始める前に確かめることを整理します。数字の意味と、数字では決まらない部分を分けて読むと、診察で聞くことも絞りやすくなります。焦って元の練習量に戻すより、肺の回復と相談しながら段階を踏むほうが、長い目で見て続けやすくなります。気胸とヨガを直接調べた研究は見つかっていないため、再発と呼吸法の研究を手がかりにします。
自然気胸とはどんな状態か
自然気胸は、肺の表面に穴があいて空気が漏れ、その空気が胸の内側にたまって肺がしぼむ状態です。肺の病気がない人に起きるものを原発性自然気胸と呼びます。肺がしぼむと、息を吸える量はその分だけ減ります。程度によっては、入院して空気を抜く処置が必要になります。しぼみが小さい場合は、処置をせずに経過を見ることもあります。
自然気胸という名前は、外から傷を受けた気胸と区別するためのものです。診断では、肺のしぼみ方と、息苦しさが日常生活にどう影響しているかが一緒に見られます。ヨガを再開できるかは、この二つが落ち着いてからの話になります。処置をするかどうかは、肺のしぼみ方や息苦しさの強さ、生活の状況によって変わります。ヨガを再開するかどうかも、この経過と切り離せません。
ヨガの呼吸法は、息の速さと深さを意識して変える練習です。ゆっくり長く吐く、秒数を数えて吐く、鼻から強く速く吐き続ける、息を止めて力む、といった形があり、息の出し入れの強さは同じではありません。気胸を起こしたあとにどの形が安全かは、研究では確かめられていません。同じ「呼吸法」という言葉でまとめず、強さごとに分けて考える必要があります。強さの違いは、このあとの節で表にして比べます。
気胸のあとの運動では、肺そのものの回復と、胸や背中を動かす筋肉の回復を分けて考えます。手術や処置のあとは、傷の周りの動きが制限されることがあるため、呼吸の練習を始める前に、体を起こす・横になるといった基本の動きから確かめると安心です。呼吸の練習を再開するときも、同じように基本の動きから順に戻すと、体の変化に気づきやすくなります。
治り方と再発の研究
気胸の治療では、空気を抜く処置をするか、経過を見るかを選ぶことがあります。Brown ほか(2020)は、316 人を処置を行う群 154 人と経過観察の群 162 人に分けて比べました。経過観察の群では、25 人(15.4%)が決められた理由で処置を受け、137 人(84.6%)は処置を受けずにすみました。欠けたデータを治療の失敗として扱う厳しい条件でも、肺がふくらみ直した人は処置の群で 129/138 人(93.5%)、経過観察の群で 118/143 人(82.5%)でした。研究の結論は、経過観察が処置に劣らないという控えめな根拠を示し、重い有害事象(治療に伴って起きる好ましくないこと)が少なかったとしています。
再発の多さをまとめた研究もあります。Walker ほか(2018)は 29 研究・13548 人を集めたメタ分析(複数の研究をまとめて計算し直す方法)で、原発性自然気胸の再発率を 1 年で 29.0%(95% 信頼区間 20.9-37.0%)、全体で 32.1%(95% 信頼区間 27.0-37.2%)と推計しました。再発は最初の 1 年に多く、研究どうしのばらつきは大きいとされています。オッズ比は起こりやすさの比べ方、95% 信頼区間は推計の幅を示す値です。女性では再発が多く(オッズ比 3.03、95% 信頼区間 1.24-7.41)、禁煙は再発の危険を約 4 分の 1 に下げる方向でした(オッズ比 0.26、95% 信頼区間 0.10-0.63)。
この数字は、処置を受けた人と受けなかった人を合わせた再発の目安です。ヨガをした人がどのくらい再発するかを示したものではありません。再発の時期が最初の 1 年に寄ることは、再開の時期を決めるときの参考になります。1 年を過ぎてからの再発もゼロではないため、長く続ける人は年単位で経過を見ておくとよいでしょう。
喫煙が危険を上げる研究
喫煙は、気胸の最初の発症にも再発にも関係し、吸わない人と比べた危険の差が大きい要因です。Bense ほか(1987)は、スウェーデンの地域で自然気胸の発生率を調べ、女性で人口 10 万人あたり年 6 人、男性で 18 人と報告しました。喫煙は最初の自然気胸の危険を女性で約 9 倍、男性で約 22 倍にし、吸う本数が多いほど危険が上がる関係がありました。生涯の危険は、重く吸い続けた男性でおよそ 12% と見積もられ、吸わない人では 1/1,000 でした。
Walker ほか(2018)でも、禁煙した人は再発の危険が低い方向でした。禁煙はヨガの練習とは別に、再発を考えるうえで触れておきたい要因です。喫煙は気胸の危険を大きく上げますが、吸わない人にも起こります。Bense ほかの研究でも、吸わない人の生涯の危険がゼロになるわけではありませんでした。吸う本数が多いほど危険が上がる関係は、本数を減らすだけでも意味があることを示しています。
禁煙は、気胸の再発の危険を下げる方向の要因として研究に挙がっています。ヨガのクラスに通うかどうかと並べて、喫煙の状況も一度振り返っておくと、再発を避ける準備になります。肺の表面に負担をかける習慣は、呼吸の練習を増やすより先に見直す価値があります。喫煙の影響は、吸っている本数の多さに左右されます。禁煙を始めると危険が下がる方向になるため、気胸を起こしたあとは、禁煙外来やかかりつけの医師に相談する道があります。
気胸とヨガを結ぶ研究は、ほとんどありません
ヨガの呼吸法と気胸を結びつける報告としては、Johnson ほか(2004)の 1 例があります。健康な 29 歳の女性が、カパラバティ(鼻から強く速く吐き続ける呼吸法)の最中に自然気胸を起こして救急外来を受診した、という症例報告(1 人の患者の経過を記録した報告)です。この 1 例から、ヨガの呼吸法が気胸を起こす頻度や、原因になっているかどうかを決めることはできません。
再開の時期を比べた研究も見つかりませんでした。処置のあと何日で運動に戻れるか、呼吸法をいつから再開してよいかは、研究の数値ではなく、肺のふくらみ方と症状の経過を見た医師の判断になります。担当の医師に、ヨガを始めてよい時期と、息を強く出す練習を再開してよい時期を分けて尋ねておくと、迷いが減ります。
ヨガのポーズそのものと気胸の関係を扱った報告は、集めた研究には含まれていません。逆さまのポーズや腕を大きく上げるポーズについても、同じように直接の報告はありません。研究が見つからない分野では、症例報告が手がかりになります。症例報告は、起きたことを記録したもので、どのくらいの頻度で起きるかは示しません。Johnson ほか(2004)の報告も、カパラバティをする人の全体を調べたものではなく、1 人の経過をたどったものです。
研究が少ないことは、ヨガが危険だと決まったということでも、安全だということでもありません。わかっていない部分は、診た医師の経験と自分の記録で補うことになります。自分の体で試した結果を記録しておけば、次に同じ判断をするときの材料になります。
強い呼吸法と逆さまのポーズをどう考えるか
呼吸法は、息を出す強さで分けて考えると整理しやすくなります。次の表は、ヨガでよく行われる呼吸の形を強さの順に並べ、再開するときの目安を添えたものです。表の目安は研究の数値ではなく、1 例の報告と一般の注意を踏まえた編集部の整理です。
| 呼吸法 | 強さの特徴 | 再開するときの目安 |
|---|---|---|
| ゆっくり長く吐く | 息の速さを自分で決められる | 短い時間から始める |
| 秒数を数えて吐く | 一定の速さを保ちやすい | 苦しさが出ない範囲で続ける |
| 鼻から強く速く吐き続ける(カパラバティ) | 短い時間に強い息の出し入れが続く | 再発からの日が浅い時期は控え、再開は医師に確かめる |
| 息を止めて力む | 胸と腹に圧がかかりやすい | 控える |
カパラバティは、短い時間に強い息の出し入れが続く呼吸法です。症例報告の女性が行っていたのはこの形で、再発後は控え、再開するときは診た医師に確かめるのが無難です。息を止めて力む動きは、胸と腹に圧がかかるため、呼吸法でもポーズでも避けられます。
逆さまのポーズは、首や肩で体重を支えるあいだ息を止めて力みやすい形です。壁を使う、足を下げる、支えを増やすといった変更で、呼吸を止めずに済む形にできます。ポーズの長さより、息を止めないことを優先します。
強く速く吐く練習を完全にやめる必要はありませんが、再発からの日が浅い時期は、呼吸の速さを上げる練習を後回しにできます。ヨガの先生に事情を伝え、カパラバティの代わりにゆっくりした呼吸を選んでもらうのも一つの方法です。呼吸の練習を減らした分、姿勢を保つ時間やゆっくりした動きに意識を移すと、練習全体の負担は上げずにすみます。
始める前と当日に確かめること
ヨガを再開する前に、担当の医師に三つのことを確かめておきます。肺がどこまでふくらみ直しているか、運動の強さをどこまで上げてよいか、呼吸を強く出す練習をいつから始めてよいか、の三つです。処置を受けた人は、処置のあとの診察で受けた説明を読み返しておくと準備になります。説明が見つからないときは、次の診察で同じ三つを聞き直してください。再発からの日が浅い人や、医師から運動を制限されている人は、自己判断でクラスに参加せず、先に診察を受けてください。
練習中や安静時に、片側の急な胸の痛みや息苦しさが出たら、その日の練習はやめて医療機関に連絡してください。症状が軽くなっても、次のクラスの前に診た医師へ伝えておくと安心です。同じ症状が繰り返す場合は、練習を続ける前に受診して相談してください。
当日は、呼吸を止める時間を短くし、苦しさが出たら休むことを先に決めておきます。クラスの前に先生へ気胸の既往を伝え、カパラバティなど強く速く吐く練習を控えたいと話しておくと、途中で判断に迷いません。先生が代わりの呼吸を用意できない場合は、その部分だけ座って見学する選択もあります。
温かい部屋では息が上がりやすく、息苦しさが暑さのせいなのか肺のせいなのか判断しにくくなります。室温の高いクラスを選ぶ日は、始める前に休憩の場所を確かめ、苦しさが続くなら早めに切り上げます。常温のクラスと温かい部屋のクラスを週の中で分けておくと、体の反応を比べやすくなります。
暑さで息が上がったのか、肺の調子が変わったのかを、翌日まで含めて記録しておくと、次の受診で説明しやすくなります。記録する項目は、クラスの種類、室温、呼吸が苦しくなった時刻、翌朝の息苦しさの四つで足ります。数字を細かくそろえるより、同じ項目を続けて書くほうが変化に気づきやすくなります。
よくある質問
気胸を起こしたあと、ヨガはいつから再開できますか。
再開の時期を比べた研究は見つかっていません。肺がふくらみ直したことを診察で確かめ、診た医師から運動の許可が出てから、短い時間・軽い強さで始めるのが現実的です。処置を受けた人は、処置のあとの診察で言われた時期を優先してください。息苦しさが残っているあいだは、呼吸の練習より姿勢を整える動きから戻すと負担が少なくてすみます。
カパラバティは一度もしてはいけませんか。
カパラバティの最中に気胸を起こした 1 例の報告がありますが、頻度はわかっていません。再発からの日が浅い時期は控え、再開するかどうかは診た医師に確かめてください。ほかの呼吸法に置き換える選択肢もあります。ゆっくり長く吐く練習なら、息の強さを自分で調整しやすいという利点があります。鼻から強く速く吐く形は、慣れるまで呼吸の速さが上がりやすい練習です。
逆さまのポーズで再発した例はありますか。
集めた研究には、逆さまのポーズと気胸を結びつけた報告はありません。ただし、首や肩で体重を支えるあいだ息を止めて力みやすい形なので、壁を使う・足を下げるなどの変更で呼吸を止めないようにします。ポーズを短く区切って、息を吐きながら戻る形にすると、胸に力が入り続ける時間を減らせます。頭を下げる角度を浅くするだけでも、息の止まりやすさは変わります。
温かい部屋のクラスは避けたほうがよいですか。
温かい部屋のヨガと気胸を調べた研究はありません。暑さで息が上がると、息苦しさの原因が暑さなのか肺なのか分けにくくなります。常温のクラスを中心にして、温かい部屋は短い時間から試す方法があります。部屋の温度を先に確かめ、休める場所がある日を選ぶと、途中で切り上げやすくなります。迷ったときは常温のクラスを選んでおけば、体の反応を見誤りにくくなります。
この記事の限界
引いた研究の対象は、原発性自然気胸と診断された人や喫煙する人で、ヨガを続ける人を追ったものではありません。Walker ほか(2018)は 29 研究・13548 人をまとめていますが、研究ごとのばらつきが大きく、再発率の幅も広くなっています。Johnson ほか(2004)は 1 例の報告です。
この記事で引いた研究には、日本人を対象にした気胸の研究が入っておらず、国内では肺の状態と生活の状況を見た医師の判断が中心になります。再開の時期や呼吸の強さは、この記事の数字だけで決めず、担当の医師の指示と自分の記録を照らして決めてください。
参考文献
- Walker ほか. Recurrence rates in primary spontaneous pneumothorax: a systematic review and meta-analysis. Eur Respir J. 2018;52(3):1800864.
- Brown ほか. Conservative versus Interventional Treatment for Spontaneous Pneumothorax. N Engl J Med. 2020;382(5):405-415.
- Bense ほか. Smoking and the increased risk of contracting spontaneous pneumothorax. Chest. 1987;92(6):1009-1012.
- Johnson ほか. Kapalabhati pranayama: breath of fire or cause of pneumothorax? A case report. Chest. 2004;125(5):1951-1952.
足の裏から温まる床の上で、自分の呼吸の速さを一度確かめてみる
- 向く人: 温かい部屋で汗をかきながら、呼吸に合わせて体をゆっくり動かしたい人
- 向く人: 流派の名前より先に、暑さの中で自分の体がどう反応するかを知りたい人
- 向かない人: 妊娠中や心臓・腎臓の持病で、医師から高温の場所での運動を止められている人
- 向かない人: 暑さで気分が悪くなりやすく、室温の高い部屋そのものを避けたい人
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よくある質問
気胸を起こしたあと、ヨガはいつから再開できますか。
再開の時期を比べた研究は見つかっていません。肺がふくらみ直したことを診察で確かめ、診た医師から運動の許可が出てから、短い時間・軽い強さで始めるのが現実的です。処置を受けた人は、処置のあとの診察で言われた時期を優先してください。息苦しさが残っているあいだは、呼吸の練習より姿勢を整える動きから戻すと負担が少なくてすみます。
カパラバティは一度もしてはいけませんか。
カパラバティの最中に気胸を起こした 1 例の報告がありますが、頻度はわかっていません。再発からの日が浅い時期は控え、再開するかどうかは診た医師に確かめてください。ほかの呼吸法に置き換える選択肢もあります。ゆっくり長く吐く練習なら、息の強さを自分で調整しやすいという利点があります。鼻から強く速く吐く形は、慣れるまで呼吸の速さが上がりやすい練習です。
逆さまのポーズで再発した例はありますか。
集めた研究には、逆さまのポーズと気胸を結びつけた報告はありません。ただし、首や肩で体重を支えるあいだ息を止めて力みやすい形なので、壁を使う・足を下げるなどの変更で呼吸を止めないようにします。ポーズを短く区切って、息を吐きながら戻る形にすると、胸に力が入り続ける時間を減らせます。頭を下げる角度を浅くするだけでも、息の止まりやすさは変わります。
温かい部屋のクラスは避けたほうがよいですか。
温かい部屋のヨガと気胸を調べた研究はありません。暑さで息が上がると、息苦しさの原因が暑さなのか肺なのか分けにくくなります。常温のクラスを中心にして、温かい部屋は短い時間から試す方法があります。部屋の温度を先に確かめ、休める場所がある日を選ぶと、途中で切り上げやすくなります。迷ったときは常温のクラスを選んでおけば、体の反応を見誤りにくくなります。