- マットとマシンを直接比べた試験は少なく、短期(6〜12週)では大きな差は報告されていません。慢性腰痛では6か月後に器具群で支障と運動恐怖が小さかった報告がありますが、痛みの強さには差がありませんでした。
- 同じ種目でも、引き込みのない誤った行い方では腹横筋の厚みが安静時と変わらない測定があります。人数と指導の細かさを見てください。
- 姿勢の研究は、大人では証拠の確実性が低い〜非常に低いと評価されています。宣伝文句ほどは支えられていません。
- 腰痛では、何もしないより痛みと支障が減る傾向はありますが、証拠の確実性は低い〜中程度で、他の運動より優れるとは言い切れません(Cochrane)。
- 指導者資格は国家資格ではなく民間認定です。米国の認定試験(NPCP)では、総合450時間以上・マット100時間以上が受験の条件です。
- 妊娠中は主治医に相談を。骨密度が低い場合は、丸めた背中の腹筋系や深い回旋など避ける種目があり、体幹を整える運動などは勧められています。
ピラティスは「ヨガの筋トレ版」ではない
ピラティスとヨガは同じ棚に並べられがちですが、出自も目的も違います。ヨガが古代インドの思想と実践に根を持つのに対し、ピラティスは20世紀前半にジョセフ・ピラティスが考案した身体調整の方法で、本人はこれを Contrology(コントロロジー)と呼びました。第一次世界大戦中、負傷兵のリハビリのためにベッドのスプリングを使った、という逸話は広く伝えられていますが、この記事ではその逸話の一次資料までは確認できていません。
いまのスタジオで大事なのは逸話より性格です。いまのピラティスは、可動域を限界まで広げることよりも、身体を支える仕組みを整えることに重心を置いています。
実際、レッスンで繰り返し言われるのは「骨盤の位置」「肋骨の下がり」「呼吸で背中を広げる」といった、地味な指示です。派手なポーズはほとんど出てきません。そのぶん、自分の身体の使い方の癖に気づきやすい方法だといえます。
マットとマシン——何が違うのか
ピラティスを検討するとき、最初に分かれ道になるのがこれです。
| マットピラティス | マシンピラティス(リフォーマー等) | |
|---|---|---|
| 使う道具 | マットのみ(小道具を使う場合あり) | リフォーマー、キャデラック、チェアなど |
| 負荷のかかり方 | 自重。自分で支える必要がある | スプリングが補助にも負荷にもなる |
| 初心者の難易度 | 正しい姿勢を保つのが意外に難しい | マシンが軌道を導くため、感覚をつかみやすい |
| 料金 | 比較的安い(グループが中心) | 高め(設備と少人数制のため) |
| 向いている人 | 費用を抑えたい、自宅でも続けたい | 腰痛などで自重が不安、感覚をつかみたい |
意外に思われるかもしれませんが、初心者にとってはマシンのほうが動きをつかみやすい場面もあります。スプリングが動きの軌道を教えてくれるので、感覚をつかみやすいと感じる人もいます。器具の手がかりが動きの習得を助けるのではないか、と考える研究者もいます(Cruz-Díaz et al., 2017, Complementary Therapies in Medicine)。支えがあるぶん、本来使うべき筋肉の代わりに別の場所で頑張ってしまう代償動作が起きにくい、という見方もあります。マットは道具に頼れないぶん、自分で正解の位置を保たなければなりません。
逆に、ある程度感覚をつかんだ人にとっては、マットのほうが難度が高い運動になります。「マット=初級、マシン=上級」という単純な階層ではない、と理解しておいてください。
研究は「器具の有無」で何が変わると言っているか
マットとマシン、どちらが良いのか。直接比べた無作為化試験はあり、数は多くありません。結論を先に言うと、どちらも改善は報告されています。器具側がわずかに有利な場面はありますが、決定的な差ではありません。
| 研究 | 対象と方法 | 結果 |
|---|---|---|
| da Luz ら 2014 Physical Therapy |
慢性の非特異的腰痛 86名。マット群43名と器具群43名に無作為割付。6週間で12回。評価者は盲検 | 6か月後に器具群が優位。障害度で平均3.0点(95%信頼区間 0.6〜5.4)、運動恐怖で4.9点(95%信頼区間 1.6〜8.2)、いずれも器具群のほうが小さく、偶然とは考えにくい差でした。ただし痛みの強さと全般的な改善感では差がなかった(da Luz et al., 2014, Physical Therapy) |
| Cruz-Díaz ら 2017 Complementary Therapies in Medicine |
慢性腰痛 98名。マット群・器具群・対照群に無作為割付。12週間。腹横筋の活動を超音波で測定 | 両方とも有効。痛み・機能・運動恐怖・腹横筋の活動いずれも改善。著者は器具のほうが改善が早い可能性にも触れている(Cruz-Díaz et al., 2017, Complementary Therapies in Medicine) |
| Mueller ら 2021 Journal of Bodywork and Movement Therapies |
高齢女性48名(マット15・器具16・対照17)。8週間、週2回50分 | 下肢・上肢の筋力、持久力、柔軟性、敏捷性が両群で改善。マットと器具の間に有意差なし。著者は「同程度の改善をもたらす」と結論(Mueller et al., 2021, Journal of Bodywork and Movement Therapies) |
読み方をまとめます。短期(6〜12週)では、どちらも改善し、大きな差は報告されていません(器具のほうが改善が早かったという報告はあります)。長めに追った da Luz らの研究では、6か月後に器具群のほうが「動くのが怖い」という感覚と日常生活の支障が小さくなっていましたが、痛みそのものの強さには差が出ていません(da Luz et al., 2014, Physical Therapy)。器具は「効果が上乗せされる装置」ではなく、「やりやすくする補助」と考えるほうが、いまの比較試験の姿に近いようです。
これらの試験はいずれも参加者100名以下で、対象は慢性腰痛や高齢女性です。立川で初めてスタジオを探す健康な大人に、そのまま当てはまるわけではありません。選ぶときの目安として読んでください。
マシンで筋肉の働きは変わるのか
ひとつだけ、器具が明確に違いを生んだ測定があります。経験者26名(女性18名・男性8名)を対象に、腹横筋と内腹斜筋の厚みを超音波で測った研究です(Endleman & Critchley, 2008, Archives of Physical Medicine and Rehabilitation)。
「ハンドレッド」という種目をマットとリフォーマーの両方で行ったところ、リフォーマーのほうが腹横筋の厚みが有意に大きくなりました(偶然とは考えにくい差、P=.011)。内腹斜筋には差がありませんでした。器具は、特定の種目で特定の筋をより働かせることがある——これは事実です。
ただし、この研究にはもっと重要な発見が含まれています。次の節で扱います。
グループとプライベート、どちらを選ぶか
もう一つの分かれ道が、グループレッスンかプライベート(1対1)かです。料金の細かい相場や実質単価の計算は料金の記事に譲り、ここでは「見てもらえるか」の観点で整理します。
グループが向く場合
- 大きな不調がなく、運動習慣をつくることが目的
- 費用を抑えて回数を重ねたい
- 他の参加者がいるほうが続けやすい性格
プライベートを検討したほうがよい場合
- 腰痛・肩の痛み・膝の不調など、具体的な症状がある
- 左右差が大きい、過去に大きな怪我をしている
- グループで「自分だけできない」感覚が強く、続かなかった経験がある
- 産前産後で、身体の状態が通常と異なる
費用は当然プライベートのほうが高くなります。ただし、合わない動きを10回繰り返すより、正しい感覚を1回つかむほうが早い場面はあります。最初の数回だけプライベートで基礎を確認し、その後グループに移る——という組み合わせは、費用対効果の面で理にかなった選び方です。この考え方はパーソナルレッスンの記事で詳しく扱っています。
器具より決定的なもの——「正しくできているか」
先ほどの Endleman らの研究では、同じ種目を正しく行った場合と、正しくない行い方をした場合でも測定しています。具体的には「お腹を引き込む(drawing-in)」動作を伴うかどうかの違いです。
結果は明快でした。引き込みを伴わない誤った「インプリント」では、腹横筋も内腹斜筋も、安静時と比べて厚みに差が見られませんでした(Endleman & Critchley, 2008, Archives of Physical Medicine and Rehabilitation)。形は同じように見えても、狙った筋が働いている証拠は得られなかったということです。
ここが選び方の核心です。リフォーマーを使うと腹横筋がより厚くなる種目はありました。一方で、やり方を誤ると、安静時と差が見られないところまで落ちました。器具の有無より、正しくできているかどうかのほうが結果を左右しうる、と読めます。
そして、自分が正しくできているかどうかは、鏡を見ても分かりません。腹横筋は体の深いところにある筋肉で、動いている実感が乏しいからです。超音波で測って初めて分かるような違いを、自力で判断するのは困難です。
したがって、スタジオを比べるときに見るべきなのは「マシンがあるか」ではなく「見てもらえるか」ということになります。マシンが並んでいても、10人を1人で見ているなら、あなたの引き込みが効いているかは誰も確認していません。逆にマットだけでも、少人数で手を当てて確認してくれるなら、そちらのほうが目的に近づきます。
グループで長く続けているのに変化を感じないという場合、原因は回数でも器具でもなく、ここにある可能性があります。パーソナルレッスンは必要かで、その見極め方を詳しく扱っています。
6つの原則——何を守れば「ピラティスになる」のか
ピラティスには、指導の拠りどころとして受け継がれてきた原則があります。呼び方や数え方は団体によって異なりますが、おおむね次の6つに整理されます。
| 原則 | 意味 | レッスン中の現れ方 |
|---|---|---|
| 集中(Concentration) | 動かしている部位に注意を向ける | 「いま背中のどこが動いていますか」と問われる |
| コントロール(Control) | 勢いを使わず、意図して動かす | 速く動けばできる動作を、あえてゆっくり行う |
| センター(Centering) | 体幹から動きを始める | 腹部を締めた状態を保ったまま手足を動かす |
| 流れ(Flow) | 動きを途切れさせない | 1回ずつ止まらず、連続した動作にする |
| 正確さ(Precision) | 回数より質 | 10回雑にやるより、5回丁寧に |
| 呼吸(Breathing) | 動きと呼吸を連動させる | 吐きながら締める、吸いながら広げる |
この6つを知っておくと、レッスンの良し悪しを自分で判断しやすくなります。回数をこなすことばかり求められ、質への言及がないレッスンは、この枠組みから外れています。逆に、動きが地味で物足りなく感じても、注意の向け方を細かく指導しているなら、正統な進め方に近いと考えてよいでしょう。
姿勢と腰痛——期待していいこと、していけないこと
ピラティスを始める動機として多いのが、姿勢の改善と腰痛です。ここは宣伝文句と研究の距離を分けて読みます。
姿勢はどこまで言えるか
姿勢のずれに対するピラティスをまとめた系統的レビュー(18研究)があります。子ども・思春期では、何もしない対照と比べて胸椎と腰椎の角度に改善の可能性が示され、証拠の確実性は中程度でした。同じ年代の側弯では、側弯用の専用の運動(Schroth 法)のほうが優るという報告もありますが、確実性は非常に低いです。一方、大人では肩や側弯、腰椎前弯などで改善を示す報告もありますが、証拠の確実性は低い〜非常に低いと評価されています(Roque et al., 2024, Musculoskeletal Care)。
つまり、「姿勢が良くなる」という宣伝を、研究が全面的に支えているわけではありません。特に大人では、まだ研究の質と量が足りません。期待してよいのは「何もしないより、測れる角度が少し動く可能性がある」までです。数回で別人のように見えるという宣伝は、研究では裏づけられていません。
腰痛について、選ぶときに知っておく範囲
非特異的腰痛(原因の特定できない腰痛)に対するピラティスをまとめた Cochrane レビュー(10試験・合計510名)では、何もしない/最小限の介入と比べると、痛みと日常生活の支障は減る傾向がありました。効果の大きさは、痛みで中くらい、支障では小さめから中くらいです。ただし証拠の確実性は低い〜中程度で、質の高い証拠は見つからなかったと著者は書いています。一方、他の運動と比べると、支障の改善に明確な差はなく、「他より優れる」とは言い切れない、というのが著者の結論です(Yamato et al., 2015, Cochrane Database of Systematic Reviews)。
スタジオを選ぶときに使うなら、こう整理できます。腰痛があるからといってピラティスだけが特別なわけではない。続けられる丁寧な運動の一つ、という位置づけです。著者は、ピラティスを選ぶかどうかは、本人の好みと費用で決めてよいとしています(Yamato et al., 2015)。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの診断がついている場合は、まず医療機関の指示を受けることが先です。「ピラティスで治る」と言うスタジオがあれば、注意したほうがよいサインです。
疾患ごとのより詳しい検証は、オンザショア立川店のサイトに一次文献ベースの記事があります(慢性腰痛とコクランレビュー、体組成のメタアナリシスなど)。
費用の構造を理解する
ピラティスはヨガより費用が高くなりやすい分野です。理由は明確で、マシンという設備投資と、少人数制という運営コストがあるためです。相場観だけでなく、費用が何に対して支払われているかを理解しておくと、比較の基準ができます。金額の計算式や解約の注意は料金プランの記事へ進んでください。
| 形態 | 1回あたりの目安 | 費用の中身 |
|---|---|---|
| マットグループ(10名前後) | 低い | 場所代と指導料を人数で割る |
| マシングループ(4〜8名) | 中程度 | 上記+マシンの設備・保守 |
| プライベート(1対1) | 高い | 指導者の時間を占有する |
ここで注意したいのが、「通い放題プラン」の見え方です。月額固定で通い放題に見えても、マシンレッスンは予約枠が限られており、実際には週1〜2回しか取れないことがあります。契約前に「先週・先々週の同じ曜日の空き状況」を見せてもらうと、実態がつかめます。
また、多くのスタジオが専用グリップソックス(滑り止め付き靴下)の着用を必須にしています。数百円から数千円の初期費用ですが、案内されないまま当日購入になることがあるので、体験の予約時に確認しておくとよいでしょう。
呼吸——ヨガと違いが出やすいところ
ピラティスとヨガで、違いが出やすいのが呼吸の指導です。
ヨガでは流派によって呼吸法が違いますが、お腹をふくらませる腹式呼吸を使う場面がよくあります。対してピラティスでは、鼻から吸って口から吐き、肋骨を横に広げる胸式呼吸が基本とされることが多いです。お腹は締めたまま、背中と脇を広げるように吸う——最初は難しく感じる人が多い部分です。
なぜこの呼吸を使うのか。腹部を締めた状態を保ったまま動くことで、体幹の安定を維持しながら手足を動かす練習になるからです。日常生活は「体幹を保ったまま手足を使う」動作の連続なので、そこに直結させるための設計だと理解すると納得しやすいでしょう。
両方を並行してやる場合、この切り替えが混乱のもとになります。「いまはピラティスの呼吸」「いまはヨガの呼吸」と意識的に分けて取り組むと、どちらのレッスンも受けやすくなります。
最初の3か月で起きること
初めての人が体験で戸惑いやすい点と、安全のために先に確認したい点を分けて書きます。
1〜2回目:自分の身体が思ったより動かないと気づく
「肋骨を下げたまま腕を上げる」「骨盤を動かさずに脚を上げる」——言われた通りにやろうとして、できないことに驚くかもしれません。これは体力の問題ではなく、その動きのパターンを持っていないだけです。がっかりする必要はありません。
3〜8回目:感覚がつながり始める
「いま腹筋の下のほうが効いている」「肩がすくんでいた」といった気づきが出てきます。この頃から、自分の身体の使い方に目が向き始めます。日常生活でも、座り方や立ち方に意識が向くようになります。
2〜3か月:変化を記録で見る
姿勢の変化を自分で確かめるなら、体重や体型の数値より立ち姿と肩の位置の写真を同じ条件で残すほうが分かりやすいです。その日の体感だけでは、変化を見誤りやすいからです。
妊娠中・産後、骨の弱さ、痛みがあるとき
米国産婦人科学会(ACOG)の委員会意見では、合併症がなければ妊娠中の身体活動は安全で望ましいとし、週150分以上の中等度の有酸素活動を目安に挙げています。一方、仰向けの姿勢を長く続けることは避けるよう勧めており、妊娠20週以降の仰向けでの運動は静脈の戻りが減りうるため、種目の変更が必要になる場合があります。腹部外傷やバランスを崩しやすい接触競技、スキューバなどは避けるよう注意があり、出血・規則的な痛みを伴う収縮・めまいなどの警告症状では運動を中止します。産後は、出産の方法(経腟か帝王切開か)や合併症の有無に応じて、医学的に安全になってから少しずつ再開するよう示されています(ACOG, 2020)。産前産後のクラスを選ぶ前に、主治医に相談してください。
骨粗しょう症や骨密度が低い場合、米国の Bone Health and Osteoporosis Foundation の案内では、丸めた背中での腹筋系(ハンドレッド、ロールアップなど)、荷重下の脊柱屈曲、深い回旋、胸郭を圧迫するマット種目を避けるよう示されています。同じ案内では、体幹を安定させる運動、姿勢を整える運動、脚の筋力、背中を反らす方向の運動は勧めています(Bone Health and Osteoporosis Foundation, 2022)。日本整形外科学会の一般向け解説でも、骨粗しょう症は骨折しやすくなる病気であり、予防として転倒に注意し運動することが挙げられています(日本整形外科学会, 2026)。診断や骨折の既往がある方は、体験前に主治医へ相談し、指導者にも骨の状態を伝えてください。首や腰に痛み・しびれがある場合も同様です。安全全般は安全の記事も参照してください。
続かないと感じたとき
「地味で退屈」「汗をかいた感じがしない」と感じるなら、目的がホットヨガや有酸素に近い可能性があります。ホットヨガの記事も併せてご覧ください。どちらが優れているかではなく、何を求めているかの問題です。
スタジオを選ぶときの確認事項
ピラティススタジオを比較するとき、料金と立地以外に見るべき点があります。
- インストラクターの資格:ピラティスの指導者資格は国家資格ではなく、民間の認定です。米国の認定試験の団体(National Pilates Certification Program、NPCP)では、受験の条件として、総合の養成は450時間以上、マットの養成は100時間以上と定めています(National Pilates Certification Program, 2026)。日本で名乗られている資格がこれと同じ基準とは限らないので、どの団体の何時間のコースかを聞いてみてください。
- 1レッスンの人数:マシンのグループレッスンでも、4人と8人では目が届く度合いが違います。
- マシンの種類と台数:リフォーマーのみか、キャデラックやチェアもあるか。台数が少ないと予約が取りにくくなります。
- 初回のカウンセリング:既往歴や不調を聞き取ったうえで内容を調整するか。いきなりグループに入れるスタジオもあります。
- 体験からの流れ:体験当日に契約を強く迫られないか。持ち帰って検討できる雰囲気か。
体験で実際に見てほしいのは、次の三点です。(1) 自分の動きに手が入り、引き込みや骨盤の位置をその場で直してもらえるか。(2) 「分からない」と言ったときに、回数を増やすのではなくやり方を言い換えられるか。(3) 痛みや妊娠・骨の話をしたときに、無理に続けさせず、医療機関への相談を勧めるか。
1番目の資格については、有無だけで良し悪しを決められるものではありません。資格が浅くても優れた指導者はいますし、その逆もあります。ただ、質問したときに明確に答えられるかどうかは、そのスタジオの姿勢を映します。スタジオ全体の比較は立川のスタジオ比較、選び方の記事も参考にしてください。
この記事の限界
- 引用した比較試験の多くは、慢性腰痛の患者や高齢女性を対象にしています。健康な成人が体型や姿勢のために通う場面をそのまま調べたものではありません。数値は目安として読んでください。
- マットと器具を直接比べた試験は数が限られています。ここで引いた3件はいずれも参加者100名以下で、追跡期間も6か月までです。長期の差については分かっていません。
- 腹横筋の厚みは「働いているか」の指標であって、「効果が出るか」とは別です。筋が働いたことと、痛みや姿勢が改善することの間には距離があります。
- 姿勢の研究は大人では証拠の確実性が低く(Roque et al., 2024)、腰痛でも他の運動より優れるとは言い切れません(Yamato et al., 2015)。外国の研究を日本の通い方にそのまま当てはめることにも限界があります。
- 妊娠・骨粗しょう症の注意は海外の学会・財団の案内に基づきます。個人の診断や薬の状況は書いていません。痛みやしびれがある方、妊娠中の方、手術後の方は、始める前に主治医にご相談ください。
出典
- da Luz, M. A. et al. (2014). Effectiveness of mat Pilates or equipment-based Pilates exercises in patients with chronic nonspecific low back pain: a randomized controlled trial. Physical Therapy. doi:10.2522/ptj.20130277
- Cruz-Díaz, D. et al. (2017). Comparative effects of 12 weeks of equipment based and mat Pilates in patients with Chronic Low Back Pain on pain, function and transversus abdominis activation. A randomized controlled trial. Complementary Therapies in Medicine. doi:10.1016/j.ctim.2017.06.004
- Mueller, D. et al. (2021). Effect of mat vs. apparatus pilates training on the functional capacity of elderly women. Journal of Bodywork and Movement Therapies. doi:10.1016/j.jbmt.2020.11.012
- Endleman, I. & Critchley, D. J. (2008). Transversus abdominis and obliquus internus activity during pilates exercises: measurement with ultrasound scanning. Archives of Physical Medicine and Rehabilitation. doi:10.1016/j.apmr.2008.04.025
- Yamato, T. P. et al. (2015). Pilates for low back pain. Cochrane Database of Systematic Reviews. doi:10.1002/14651858.CD010265.pub2
- Roque, G. C. et al. (2024). Are Pilates Exercises Effective in Improving Postural Misalignment? Systematic Review and Metanalysis. Musculoskeletal Care. doi:10.1002/msc.70009
- ACOG (2020). Physical Activity and Exercise During Pregnancy and the Postpartum Period. ACOG Committee Opinion No. 804. Obstetrics & Gynecology. doi:10.1097/AOG.0000000000003772
- Bone Health and Osteoporosis Foundation (2022). So You Want to Do Pilates? And You Have Osteoporosis...(PDF 作成 2022). Safe Pilates flyer (PDF)
- 日本整形外科学会 (2026). 骨粗鬆症(骨粗しょう症)(2026年取得). 症状・病気をしらべる
- National Pilates Certification Program (2026). FAQ(2026年取得). NPCP FAQ
立川での選択肢
立川駅周辺では、マシンピラティス専門のスタジオ、ホットヨガと併設のマシンピラティス、マット・マシン・プライベートを揃えた総合スタジオまで、形態が分かれています。それぞれの立地と形態は立川のヨガ・ピラティススタジオ比較にまとめました。
ピラティスは体験の印象がスタジオごとにはっきり分かれる分野です。2か所以上の体験を受けてから決めることを強くおすすめします。同じ「マシンピラティス」でも、指導の細かさと雰囲気はまったく違います。
この記事のまとめ
- ピラティスは可動域を広げるより「支える仕組みを整える」方法。
- 初心者にはマシンのほうが動きをつかみやすい面もある。マット=初級ではない。
- 器具の有無より、正しくできているかどうかで結果が変わりうる。人数と指導の細かさを見る。
- 姿勢・腰痛の研究は「何もしないより良い」方向はあるが、他の運動より優れるとは言い切れない。
- 資格は民間認定。妊娠中・骨が弱い・痛みがあるときは主治医に相談してから。
- 診断がついている不調は、まず医療機関へ。「治る」と謳うスタジオには注意。
- 呼吸がヨガと違う。並行する場合は意識的に切り替える。
よくある質問
マットとマシン、初心者はどちらがよいですか?
マシンは軌道を導いてくれるので、感覚をつかみやすいと感じる人がいます。慢性腰痛86名の比較では、6か月後に器具群で日常生活の支障と運動恐怖が小さかった一方、痛みの強さには差がありませんでした(da Luz et al., 2014)。高齢女性の体力指標ではマットと器具で差がない報告もあります(Mueller et al., 2021)。
マシンがあるスタジオのほうが効果が高いですか?
必ずしもそうではありません。経験者26名の測定では、リフォーマーのハンドレッドで腹横筋の厚みがマットより大きかった一方、引き込みのない誤った行い方では筋の厚みが安静時と変わりませんでした(Endleman & Critchley, 2008)。器具の有無より、正しくできているかどうかのほうが結果を左右しうると読めます。
ピラティスで姿勢は良くなりますか?
子ども・思春期では胸椎・腰椎の角度に改善の可能性(証拠の確実性は中程度)が示されていますが、大人では証拠の確実性が低い〜非常に低いと評価されています(Roque et al., 2024)。数回で大きく変わるという宣伝は、研究では支えきれません。
腰痛があるとき、ピラティスを選ぶ意味はありますか?
何もしない/最小限の介入と比べると痛みと支障は減る傾向がありますが、証拠の確実性は低い〜中程度で、他の運動より優れるとは言い切れません(Yamato et al., 2015)。診断がついている場合は、まず医療機関の指示を受けてください。
妊娠中や骨粗しょう症でも受けられますか?
合併症がなければ妊娠中の運動は望ましいとされ、週150分以上の中等度活動が目安です。仰向けを長く続けることや、20週以降の仰向けの運動には注意が必要です。産後は、出産の方法や合併症の有無に応じて、医学的に安全になってから少しずつ再開するとされています(ACOG, 2020)。骨密度が低い場合は、ハンドレッドやロールアップなど丸めた背中の腹筋系・深い回旋などを避ける案内があり、体幹を安定させる運動などは勧められています(Bone Health and Osteoporosis Foundation, 2022)。必ず主治医に相談してください。