- 米国7,752名の追跡研究では、定額会員の実際の来館は月平均4.3回だった。
- 1回あたり17ドル超を払っていた。同じ施設の10回券なら10ドルだった。
- 実質単価=(月額+月々の諸費用+初期費用÷継続月数)÷ 実際に通う回数。
- 自分の見積もりから2〜3割引いた数字でも計算してみる。
- 最初の1〜2か月は回数が読めない。短い契約から始めて記録で判断する。
人は自分の通う回数を、はっきり多めに見積もる
料金プランを選ぶとき、私たちは「週2回は行くだろう」と考えます。そしてその前提で、通い放題や回数の多いプランを選びます。この見積もりが実際とどれだけずれるのかを、大規模なデータで調べた研究があります。
米国のヘルスクラブ3施設の会員7,752名について、契約の選択と日々の来館記録を3年間追跡した研究です(DellaVigna & Malmendier, 2006, American Economic Review 96(3): 694–719)。経済学の論文ですが、扱っているのはまさにこの問題です。
| 調べたこと | 結果 |
|---|---|
| 月額70ドル超の定額契約を選んだ会員の、実際の来館回数 | 月あたり平均 4.3回 |
| その人たちが実際に払っていた1回あたりの金額 | 17ドル超 |
| 同じ施設で選べた10回券の1回あたり | 10ドル |
| 会員期間を通じて取り逃した節約額 | 平均 600ドル |
つまり、定額プランを選んだ人の多くは、都度払いのほうが安く済む使い方をしていたということです。1回あたりで見れば7割ほど高く払っていたことになります。
この研究はまた、定額の月契約を選んだ人のほうが、1年を超えて在籍し続ける確率が17%高かったとも報告しています。解約の手続きを取らないまま在籍が続く、という側面があります。
大事なのは、この人たちが不合理だったということではありません。将来の自分がどれだけ通うかを、人は体系的に多めに見積もる——それがこの研究の要点です。これは意志の弱さの問題ではなく、予測の問題です。
だから、比べるべきは月額ではない
月額の安さを比べても、実際の負担は分かりません。次の式で実質単価を出してください。
実質単価 =(月額 + 月ごとの諸費用 + 初期費用 ÷ 想定継続月数)÷ 実際に通う回数
分母の「実際に通う回数」を、希望ではなく予想として入れるのがこの式の要点です。そして先ほどの研究が示すとおり、その予想は多めに出がちです。自分の見積もりから2〜3割引いた数字も入れて、両方で計算してみてください。
たとえば月額15,000円のプランで、週2回(月8回)通うつもりなら実質1,875円です。しかし実際が月5回だったら3,000円になります。都度払いが1回3,500円なら差はほとんどありません。この差を入会前に知っているかどうかが分かれ目です。
月額以外にかかるもの
「月ごとの諸費用」に入れ忘れやすい項目を挙げます。ひとつひとつは小さくても、合計すると月に数千円になります。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 入会金・登録料・事務手数料 | キャンペーンの適用条件。無料になる代わりに最低契約期間が付いていないか |
| 月ごとの施設維持費 | 月額とは別に毎月かかる固定費があるか |
| マット・タオルのレンタル | 毎回借りると月に数千円。持ち込み可否と、持ち込む場合の手間 |
| 水・ドリンク | 持ち込み可か。館内購入が必要なら1回あたり数百円 |
| 専用品 | グリップソックスなど着用が必須の物品があるか |
| ウェアのクリーニング | 発汗量が多い種目では洗濯の回数が増える |
| 休会費 | 休む月にも費用がかかるか。かかるならいくらか |
初期費用(入会金・登録料)は、通う予定の月数で割って月額に足して考えてください。3か月でやめるつもりなら、入会金20,000円は月あたり6,667円の上乗せです。12か月続けるなら1,667円です。同じ金額でも意味が変わります。
解約条件は、入会前にしか確認できない
実質単価と同じくらい重要なのが、やめ方です。次の4点を、契約する前に確認してください。
- いつまでに申し出れば止まるのか(前月の何日までか)
- どこに申し出るのか(店頭のみか、Webでできるか)
- どうやって申し出るのか(書面が必要か、対面での引き止めがあるか)
- いつから止まるのか(申し出た翌月か、翌々月か)
入会後に確認しようとすると、たいてい間に合いません。また、休会と退会は別の手続きであることが多く、休会のつもりで手続きして会費が発生し続ける、ということが起こります。
最初の数か月は、回数を読めなくて当たり前
ここまでの話は「実際に通う回数が分かっていれば」成り立ちます。しかし始める前には分かりません。しかも、運動が習慣になるまでには時間がかかります。新規ジム会員111名を12週間追跡した研究では、習慣として定着するまでに週4回以上を6週間ほど要していました(Kaushal & Rhodes, 2015, Journal of Behavioral Medicine)。
つまり最初の1〜2か月は、通う回数が安定していない時期です。この時期の実績で長期プランを決めるのも、始める前の希望で決めるのも、どちらも精度が低い。現実的な進め方は次のようになります。
- 最初は短い契約か回数券から始める。いきなり長期の割引プランに入らない。割引率より、読み違えたときの損失のほうが大きくなりがちです。
- 1〜2か月、実際の回数を記録する。記憶ではなく記録で見ます。予約履歴を数えるだけで十分です。
- その実測値で計算し直してからプランを変える。多くのスタジオはプラン変更ができます。最初から最適である必要はありません。
なお、通う頻度そのものをどう考えるかは、目的によって変わります。ホットヨガの場合は暑さへの慣れという別の要因もあるため、ホットヨガとは何かで扱っています。続けられるかどうかを左右する要因はスタジオの選び方にまとめました。
この記事の限界
- 引用した研究は2006年の米国のヘルスクラブのデータです。日本のヨガ・ピラティススタジオを調べたものではありません。金額をそのまま当てはめることはできません。使えるのは「人は通う回数を多めに見積もる」という構造のほうです。
- 平均の話であって、あなたの話ではありません。実際に週3回通い続ける人もいます。だからこそ、希望ではなく記録で判断することを勧めています。
- 定額プランには金額以外の価値もあります。「元を取ろう」と思うことが通う動機になる人もいますし、回数を気にせず予約できる気楽さもあります。ここで扱ったのは金額だけの比較です。
- 本文中の計算例は、説明のために置いた仮の数字です。特定のスタジオの料金ではありません。
よくある質問
通い放題と回数券、どちらが得ですか?
実際に通う回数によります。米国のヘルスクラブ7,752名を3年追跡した研究では、月額70ドル超の定額契約者の来館は月平均4.3回で、1回あたり17ドル超を払っていました。同じ施設の10回券は1回10ドルでした。多くの人にとっては、自分が思うより回数が少なく、都度払いのほうが安く済んでいたということです。
実質単価はどう計算しますか?
(月額+月ごとの諸費用+初期費用÷想定継続月数)÷ 実際に通う回数、で出します。分母には希望ではなく予想を入れ、さらにその予想から2〜3割引いた数字でも計算してみてください。
入会金が無料のキャンペーンは得ですか?
条件次第です。無料になる代わりに最低契約期間が設定されていることがあります。その期間に通えなくなった場合の総額を、契約前に計算してください。
最初にどのプランを選べばよいですか?
短い契約か回数券から始めるのが現実的です。運動が習慣として定着するまでには時間がかかり、最初の1〜2か月は通う回数が安定しません。1〜2か月の実績を記録してから、プランを変えるほうが読み違えが小さくなります。
解約で気をつけることは何ですか?
「いつまでに・どこに・どうやって申し出れば・いつ止まるのか」の4点を、入会前に確認してください。また休会と退会は別の手続きであることが多く、休会のつもりで会費が続くことがあります。