- へバーデン結節は、指先に近い関節にできる変形性関節症です。
- 手の変形性関節症に対する運動の効果は、コクランの系統的レビューでまとめられています。
- ヨガそのものを調べた研究は、この題材ではほとんど見つかりません。
- ヨガのポーズでは、手は体重を支える道具として使われます。
へバーデン結節とヨガ|指の関節の痛みの研究と、手をつく・握るポーズ
「運動は手の痛み、機能、指のこわばりに、小さな良い効果を示した」。手の運動の試験をまとめたコクランの報告は、控えめな言葉を選んでいる。Østerås らが 2017 年に示したこの結論は、効果を大きく見せず、根拠の質が低いことも隠していない。指の第一関節が太くなって痛む人にとって、この控えめさは、ヨガをどう続けるかを考える手がかりになります。
へバーデン結節は、指先に近い関節が膨らみ、曲げると痛む変形性関節症です。痛む指でマットに手のひらをつき、体重を前へ移すポーズをしてよいのか迷う人は少なくありません。マットの上で指を開いたまま体重を預ければ、重さは指の付け根に集まります。指先だけで床を押し返していると、変形した関節に力がかかり続けます。
変形があることと、いま痛むことは別の問題です。手の変形がどれくらい多いのか、運動にどれだけの効果が報告されているのか、ヨガのポーズで手をどう使えばよいのかを、研究の範囲で順に見ていきます。ポーズをやめるか続けるかを、白か黒かで決める必要はありません。支える場所と動かす範囲を変えるだけで、続けられる形は見つかります。
へバーデン結節はどれくらい多いのか
へバーデン結節は、指先に近い関節にできる変形性関節症です。関節の軟骨がすり減り、骨が膨らんで結び目のように見えることがあります。指の第一関節と呼ぶこともありますが、親指の付け根や指の真ん中の関節とは場所が違います。物を握るたびに違和感が残るのは、この関節に力がかかっているためです。
日本でこの変形がどれくらいあるかを調べたのが、ROAD 研究の第三次調査です。507 人の男性と 1028 人の女性を対象に、X 線で見た手の変形性関節症の割合を数えました。X 線で 2 以上の変化があった人は男性で 89.9%、女性で 92.3% にのぼり、年齢との関連が強く出ています。男女の差は有意ではありませんでした。
変形が進んだ人では、握力の低下と手の痛みが報告されています。年齢・性別・体格・住んでいる地域を調整したうえで、重症度と骨のびらんが、低い握力と手の痛みに関連しました。変形の程度が強いほど、手の使いにくさが出やすいということです。ただし、これは関連であって、変形が痛みを起こす順番までは示していません。
オランダの地域住民を調べた研究でも、手の関節の変化は珍しくありませんでした。少なくとも 1 つの手の関節に変化があったのは女性で 67%、男性で 54.8% です。場所別では指先に近い関節が 47.3% ともっとも多く、親指の付け根が 35.8%、指の真ん中の関節が 18.2%、指の付け根が 8.2% でした。へバーデン結節が出る場所が、手のなかで最も変化の多い場所だということになります。
ただし、X 線の変化と痛みの結びつきは強いものではありません。右手に変形がある人の手の痛みのオッズ比は 1.9(95% 信頼区間 1.5〜2.4)で、関連は弱〜中等度にとどまりました。変形がはっきり見えても痛みがない人もいれば、変形が軽くても痛む人もいます。X 線の写真だけで、その人の痛みの強さは決められません。
手の運動はどれくらい効くのか
手の変形性関節症に対する運動の効果は、コクランの系統的レビューでまとめられています。Østerås らは 2017 年、手の運動を調べた試験を集め、痛み・機能・指のこわばりへの効果を計算し直しました。対象になった試験は限られ、根拠の質は低いと評価されています。それでも、効果の大きさを数値で確かめられる数少ないまとめです。
痛みについては、5 つの試験・381 人の結果がまとめられました。運動した群はしなかった群より痛みの点数が低く、標準化平均差は -0.27(95% 信頼区間 -0.47〜-0.07)でした。0〜10 の尺度で見ると、対照群の痛みが 3.9 点だったのに対し、運動で 0.5 点(95% 信頼区間 0.1〜0.9)下がっています。同じ改善を得るために運動が必要な人数は 9 人でした。
機能についても、4 つの試験・369 人で改善の方向が出ています。標準化平均差は -0.28(95% 信頼区間 -0.58〜0.02)で、信頼区間が 0 をまたいでいます。指のこわばりは、対照群の 4.5 点から 0.7 点(95% 信頼区間 0.3〜1.0)下がり、必要な人数は 7 人でした。痛みの絶対的な減少は 5%(1%〜9%)、こわばりは 7%(3%〜10%)と報告されています。
効果は小さいものの、有害事象は少ないと報告されています。有害事象を記録した 3 つの試験では、件数がごく少なく、重いものはありませんでした。生活の質を測った試験は 1 つだけで、効果は不確かとされています。根拠の質が低いのは、試験の数が少なく、信頼区間が広いためです。
欧州リウマチ学会の推奨は、運動を薬以外の選択肢の一つに位置づけています。2018 年の改訂では 5 つの基本原則と 10 の推奨が合意され、最初の 3 つが教育・補助具・運動・装具といった薬を使わない方法を扱っています。運動は特別な治療というより、ふだんの手の使い方の延長として置かれています。装具や補助具も同じ並びにあり、運動だけに絞る必要はありません。
ヨガを調べた研究は 1 本しかない
ヨガそのものを調べた研究は、この題材ではほとんど見つかりません。手の変形性関節症に対して、ヨガをもとにしたプログラムを試した試験は、1994 年の Garfinkel らの 1 本だけです。指導者のもとで週 1 回、8 週間行った小さな試験で、痛みの軽減が報告されました。ただし、試験は古く、規模も小さく、効果の数値はほとんど示されていません。
この 1 本から、ヨガがへバーデン結節に効くとは言えません。週 1 回・8 週間という条件は、ふだんのクラスとは違います。報告自身も、ほかの治療と比べる研究と、長期的な効果の検討が必要だと結んでいます。ヨガのポーズ全体を評価した研究ではなく、手だけのプログラムだったことも押さえておきたい点です。
代わりに根拠になるのは、手の運動全般の研究です。Østerås らのまとめには、ストレッチや筋力トレーニングなど複数の種類の運動が含まれています。ヨガのポーズがそのまま試されたわけではありませんが、手を動かすこと自体には小さな効果の方向が示されています。ポーズを選ぶときは、この方向を手がかりにします。
ヨガのクラスで手をどう使うかを測った研究も、温かい部屋と指の関節を組み合わせた研究も、この根拠の中にはありません。汗で手が滑る場面や、指を組むときに力が入る場面の測定もされていません。ポーズごとの負担は、手の構造から考えられる範囲で調整することになります。それでも、動かさないより、範囲を決めて動かすほうが、手の使い方を保ちやすいと考えられます。
手をつく・握るポーズで指にかかる負担
ヨガのポーズでは、手は体重を支える道具として使われます。下向きの犬のポーズでは両手に体重の一部がかかり、板のポーズでは手首を大きく反らせて支えます。四つ這いでは手のひらの付け根に重さが集まり、指を組むポーズでは指どうしを横に押し合います。どれも指の関節にとっては、日常生活ではあまりかけない向きの力です。
支える場所を変えるだけで、指にかかる力の向きは変わります。指先で床を押し返すのをやめ、手のひら全体を広げて体重を預けると、指の関節にかかる負担は分散されます。手首や指が痛む日は、こぶしや前腕で支える形に替える方法もあります。これらは研究で比べられたものではなく、手の使い方として一般的に知られている工夫です。
ポーズごとに、指のどこに負担が集まりやすいかを表にまとめました。痛みがある関節を動かさないのではなく、動かす範囲と支える場所を変える、という考え方で並べています。
| ポーズ | 指に集まりやすい負担 | 指を守る形 |
|---|---|---|
| 下向きの犬 | 手のひらから指先へ体重が抜け、指先で床を押し返しやすい | 手のひら全体を広げ、指は軽く曲げて添える。つらい日は壁に手をついて行う |
| 板のポーズ | 手首を反らせたまま、指の付け根に体重がかかる | こぶしで支える、前腕をつく、膝を床につけて負荷を減らす |
| 四つ這い | 手のひらの付け根に重さが集まる | こぶし、または前腕で支える。指を大きく開かない |
| 指を組むポーズ | 指どうしを横に押し合い、関節にねじれがかかる | 指を組まず、手のひらを合わせるだけにする。痛む指は伸ばしたまま |
| 握るポーズ | 握力を長く保つ必要があり、関節に圧が続く | 強く握らず、道具やブロックに替える。握る時間を短く区切る |
どの形が合うかは、ポーズのあとと翌朝の痛みで判断します。ポーズの最中に気持ちよくても、翌朝に指がこわばるなら、その日は支え方を変えた合図です。痛みが翌日には引くなら、同じ形をもう一度試してよい範囲と考えられます。回数や時間を増やすのは、痛みが落ち着いてからにします。
物を握る動作が多い日は、指の関節に力がかかり続けています。買い物の袋を指で提げる、瓶のふたを強く回す、といった動作が重なると、ヨガの前にすでに指が疲れていることがあります。そういう日は、握るポーズを短くするか、手のひらで押す形に替えます。手指の使い方の総量を、1 日の中で配分する感覚です。
始める前と当日に確かめること
ヨガを始める前に、指の状態を一度確かめておきます。同じ姿勢で手を机に置き、指を 1 本ずつ曲げ伸ばしして、痛む関節と痛まない関節を分けておきます。腫れている関節や熱を持っている関節があれば、その日は手をつくポーズを避けます。痛みの場所を把握しておくと、クラスで調整するときに迷いません。
次のような変化があれば、ポーズの調整より先に医療機関で診てもらう必要があります。関節が急に赤く腫れて熱い、朝のこわばりが長く続く、複数の関節が腫れる、といった場合です。整形外科かリウマチ科を受診してください。へバーデン結節は変形性関節症ですが、関節リウマチなど別の病気が隠れていることがあります。湿布や運動だけで様子を見続けるのは避けたほうが安全です。
温かい部屋では、指がよく動くように感じることがあります。温まって動かしやすい感覚と、痛まない範囲は別ものです。気持ちよく曲がる範囲をその日の上限として扱うと、翌朝に痛みが残ったときに原因を絞りやすくなります。汗で手が滑る日は、マットの上にタオルを敷くか、滑りにくい素材の敷物を使います。
手の負担を減らす道具は、クラスでも使えます。ブロックを手の下に置けば、手首を反らせる角度を小さくできます。タオルを丸めて手のひらの下に敷けば、指先に体重が抜けにくくなります。装具やサポーターは、欧州の推奨でも薬を使わない選択肢の一つに挙げられています。使う場合は、指を締めつけすぎないものを選びます。
クラスのあとは、手の状態を短く記録します。どのポーズで、どの指に、どのくらいの痛みが出たかを、3 段階くらいの粗さで書けば十分です。翌朝の状態と並べると、自分にとって負担の大きい形が見えてきます。記録が 2 週間分たまると、ポーズを変えた効果も比べやすくなります。
よくある質問
へバーデン結節があってもヨガを続けてよいですか。
変形があることだけを理由に、ヨガをやめる必要はありません。手の運動には小さな効果が報告され、有害事象は少ないとされています。ただし、研究の対象は手の変形性関節症の人全体で、へバーデン結節だけを集めたものではありません。痛みが強い日や腫れがある日は、手をつくポーズを休ませてください。痛みが長引く場合は、自己判断で続けずに整形外科で相談します。
手をつくポーズで痛むときは、どう変えればよいですか。
まず、指先で床を押し返していないか確かめます。手のひら全体を広げ、体重を指の付け根に集めないようにすると、痛みが軽くなることがあります。それでも痛むなら、こぶしや前腕で支える形に替えます。下向きの犬は、壁に手をついて行うだけでも指にかかる負荷は小さくなります。支える形を変えても痛みが続く日は、そのポーズを休む判断も必要です。
温かい部屋のヨガは、指にとって良いですか、悪いですか。
温かい部屋が指の関節に良いか悪いかを直接調べた研究はありません。温まると動かしやすいと感じる一方で、動かしやすいことと痛まないことは別です。汗で手が滑ると、指に余計な力が入ります。温度より、支える形と動かす範囲を先に整える順番が、判断しやすいはずです。常温のクラスで試してから、温かい部屋に戻す進め方もあります。
装具やサポーターは使ってもよいですか。
欧州リウマチ学会の推奨では、装具が薬を使わない選択肢の一つに挙げられています。手の関節を安定させたいときに使うものですが、締めつけすぎると血流を妨げます。クラスでは、指を自由に動かせるゆるさのものを選び、痛みが強い日だけ使う方法もあります。どの装具が合うかは、医師や作業療法士に相談すると選びやすくなります。
この記事の限界
この記事が扱えた範囲は、手の変形性関節症の研究と、ヨガをもとにした 1 本の古い試験にとどまります。X 線の調査は地域住民を横断的に見たもので、ヨガをする人を長く追ったものではありません。運動の効果をまとめたコクランも、ヨガのポーズを個別に比べたわけではなく、効果の幅は試験の少なさを反映しています。
日本人のデータは ROAD 研究の地域住民の X 線調査が中心で、対象はヨガの練習者ではなく、痛みと変形の関係も横断的な観察にとどまります。指の腫れや痛みが強い場合の診断と治療の判断は、整形外科やリウマチ科の診察が担います。
参考文献
- Dahaghin ほか. Prevalence and pattern of radiographic hand osteoarthritis and association with pain and disability (the Rotterdam study). Ann Rheum Dis. 2005;64(5):682-687.
- Garfinkel ほか. Evaluation of a yoga based regimen for treatment of osteoarthritis of the hands. J Rheumatol. 1994;21(12):2341-2343.
- Kloppenburg ほか. 2018 update of the EULAR recommendations for the management of hand osteoarthritis. Ann Rheum Dis. 2019;78(1):16-24.
- Kodama ほか. Prevalence of hand osteoarthritis and its relationship to hand pain and grip strength in Japan: The third survey of the ROAD study. Mod Rheumatol. 2016;26(5):767-773.
- Østerås ほか. Exercise for hand osteoarthritis. Cochrane Database Syst Rev. 2017;1:CD010388.
足の裏から温まる床の上で、自分の呼吸の速さを一度確かめてみる
- 向く人: 温かい部屋で汗をかきながら、呼吸に合わせて体をゆっくり動かしたい人
- 向く人: 流派の名前より先に、暑さの中で自分の体がどう反応するかを知りたい人
- 向かない人: 妊娠中や心臓・腎臓の持病で、医師から高温の場所での運動を止められている人
- 向かない人: 暑さで気分が悪くなりやすく、室温の高い部屋そのものを避けたい人
このサイトはオンザショア立川店の運営者が制作しています。オンザショア立川店は立川駅から徒歩1分、溶岩プレートの床で部屋を温めるヨガスタジオです。
よくある質問
へバーデン結節があってもヨガを続けてよいですか。
変形があることだけを理由に、ヨガをやめる必要はありません。手の運動には小さな効果が報告され、有害事象は少ないとされています。ただし、研究の対象は手の変形性関節症の人全体で、へバーデン結節だけを集めたものではありません。痛みが強い日や腫れがある日は、手をつくポーズを休ませてください。痛みが長引く場合は、自己判断で続けずに整形外科で相談します。
手をつくポーズで痛むときは、どう変えればよいですか。
まず、指先で床を押し返していないか確かめます。手のひら全体を広げ、体重を指の付け根に集めないようにすると、痛みが軽くなることがあります。それでも痛むなら、こぶしや前腕で支える形に替えます。下向きの犬は、壁に手をついて行うだけでも指にかかる負荷は小さくなります。支える形を変えても痛みが続く日は、そのポーズを休む判断も必要です。
温かい部屋のヨガは、指にとって良いですか、悪いですか。
温かい部屋が指の関節に良いか悪いかを直接調べた研究はありません。温まると動かしやすいと感じる一方で、動かしやすいことと痛まないことは別です。汗で手が滑ると、指に余計な力が入ります。温度より、支える形と動かす範囲を先に整える順番が、判断しやすいはずです。常温のクラスで試してから、温かい部屋に戻す進め方もあります。
装具やサポーターは使ってもよいですか。
欧州リウマチ学会の推奨では、装具が薬を使わない選択肢の一つに挙げられています。手の関節を安定させたいときに使うものですが、締めつけすぎると血流を妨げます。クラスでは、指を自由に動かせるゆるさのものを選び、痛みが強い日だけ使う方法もあります。どの装具が合うかは、医師や作業療法士に相談すると選びやすくなります。