- 体は運動で熱をつくり、皮膚から熱を逃がして体温を調節しています。
- Martin-Latry(2007)は、熱波の期間に救急部門を受診した人について、向精神薬の使用と暑さに関連する病気を調べました。
- Hermesh(2000)は、抗精神病薬の持続性注射による治療を続け、症状が落ち着いている統合失調症の男性7人と、健康な比較対象8人を調べました。
- 練習を選ぶ際は、ポーズの名称より先に、加温の有無と途中で休める場所を確認します。
抗うつ薬と暑さ|心の薬を飲んでいる人のヨガと、汗のかき方が変わる理由
5%〜14%という数字が、Mago(2013)の論文で抗うつ薬による過剰な発汗の頻度として紹介されています。服薬を続けながらヨガを始めたい人にとって、暑い部屋でさらに汗をかいてよいのかは気になる点です。心の薬には汗や体温の調節に影響するものがあるため、高温のヨガを選ぶ前に薬の名前と体調を薬剤師か主治医に伝え、加温しない環境を含めて練習条件を検討します。汗の量が増えたことと、暑さに強くなったことは別に考えます。
薬局の棚の前で汗拭き用品を選ぶとき、以前より汗をかくようになったと感じることがあるかもしれません。その変化は、体力や季節だけでなく、薬の副作用を相談する手掛かりにもなります。汗は安全の証明ではありません。汗をかく量だけで参加を決めず、熱さ、だるさ、めまいなどを合わせて見ます。
向精神薬とは、気分、不安、眠りなどに使う薬の総称で、抗うつ薬や抗精神病薬などが含まれます。同じ呼び名の薬でも働き方や処方の目的は異なるため、薬の袋やお薬手帳が相談の出発点になります。薬を自分で休んで暑い部屋に入るのではなく、治療を保ちながら暑さへの負担を減らす順序で考えます。
汗が増える副作用と、熱を逃がす働きを分ける
体は運動で熱をつくり、皮膚から熱を逃がして体温を調節しています。汗は皮膚の上で蒸発するときに熱を奪いますが、湿った部屋では蒸発しにくくなります。服やマットがぬれるほど汗をかいていても、体の熱が十分に逃げているかは別の問題です。ヨガの動きをゆっくりにしても、部屋の暑さは体に加わる負担として残ります。
Marcy(2005)は、抗うつ薬によって汗が増える副作用について、症例と文献をまとめています。気分の治療が落ち着いていても、汗の多さが日常生活の困り事になる場合があります。Mago(2013)も、顔、頭、首、胸などの発汗や、急に汗が噴き出すような現れ方を報告しています。運動中だけの変化か、涼しい場所で休んでいても起こるのかを伝えると、相談の内容が具体的になります。
一方、神経から汗腺への伝達を抑える抗コリン作用などによって、汗をかきにくくする薬もあります。汗の増加と減少は見た目には反対でも、どちらも薬と暑さの関係を確認するきっかけになります。汗が少ない人は「水分を失っていないから平気」と考えず、体の熱さや気分の悪さに目を向けます。以前と同じ練習でも反応が変わったら、その変化を記録して医療者に伝えます。
薬を飲み始めた時期、処方が変わった時期、汗が気になり始めた時期は、思い出せる範囲で並べておきます。濡れた服を着替える必要がある、夜に汗で目が覚めるなど、生活への影響も役立つ情報です。発汗を我慢の問題にせず、運動への希望と一緒に相談すると、治療と活動の両方を考えやすくなります。
熱波の研究は薬の使用と暑さによる受診の関連を示す
Martin-Latry(2007)は、熱波の期間に救急部門を受診した人について、向精神薬の使用と暑さに関連する病気を調べました。救急部門に来た1405人のうち、56人(4%)に暑さに関連する病態がありました。暑さに関連する病態があった人と対照の人を比べると、抗コリン薬、抗精神病薬、抗不安薬の使用に関連が見られました。
ほかの要因を考慮した解析で、抗精神病薬のオッズ比は4.6、95%信頼区間は1.9〜11.2でした。オッズ比は、比較した群で関連の強さを表す指標で、個人が熱中症になる確率そのものではありません。信頼区間は推定の不確かさを示す幅です。この数字を読んで「服薬している自分の危険が必ず同じ倍率になる」と置き換えるのではなく、暑さが強い場面で処方を確認する理由として受け止めます。
この研究は薬を飲む群と飲まない群を無作為に振り分けた試験ではなく、実際の診療を調べた観察研究です。病気の状態、年齢、生活環境なども暑さの影響に関わるため、薬だけが原因だとは言えません。著者らは、特に高齢者などについて、熱波のような状況では薬の利益と危険を慎重に評価する必要があると述べています。処方を見直す必要があるかどうかは、治療の経過を知る医師が判断します。
また、抗精神病薬について示された数値を、そのまま抗うつ薬の数値として紹介することは避けます。抗うつ薬による発汗の研究と、暑さによる救急受診の研究では、扱う薬と結果が異なります。相談するときも「心の薬を飲んでいる」という説明に薬名を添えることで、自分に関係する作用を確かめやすくなります。
少人数の暑さの試験と、救急件数が増えなかった報告
Hermesh(2000)は、抗精神病薬の持続性注射による治療を続け、症状が落ち着いている統合失調症の男性7人と、健康な比較対象8人を調べました。暑い環境で歩く試験を行うと、治療中の群で直腸温と皮膚温の上昇が大きい結果でした。直腸温は体の内部の温度をとらえる測定で、汗を見ただけでは把握しにくい体内の変化を示します。
著者らは、体の中心部から皮膚へ熱を運ぶ能力の低下などを、暑さに耐えにくい理由として考察しています。ヨガで体を動かすときも、息切れの強さだけでなく、熱を逃がす環境を意識する理由になります。体調が安定していることと、加温された部屋で負担なく動けることを別々に確認する姿勢が大切です。医療者には病状だけでなく、部屋を加温する運動を予定していることまで伝えます。
Kaiser(2001)の熱波に関する調査では、暑さに関連して亡くなった17人のうち8人(47.1%)に精神疾患がありました。作動するエアコンがあることは、死亡が少ないことと強く関連していました。診断名への不安を強めるよりも、涼しい場所を使えるか、困ったときに助けを呼べるかという生活上の準備につなげたい結果です。
一方、Bulbena(2009)は、熱波の時期に精神科の救急受診や入院の件数が有意に増減したとは報告していません。行動の変化は報告されており、件数だけではとらえられない側面もありました。暑さに関連する身体の病気による受診と、精神科の救急受診は異なる結果を数えています。危険を示す報告と件数が増えなかった報告を並べると、何を測った研究かを見て読む必要がわかります。
ヨガの選択では部屋と休み方を具体的に比べる
練習を選ぶ際は、ポーズの名称より先に、加温の有無と途中で休める場所を確認します。高温で汗をかくことを目的にすると、発汗の変化がある人ほど「もう少し頑張れば慣れる」と続けてしまいがちです。薬の影響を相談するまでは加温する練習を見合わせ、冷房などで暑さを避けられる場所を候補にします。運動そのものを始めるかどうかも、今の体調を含めて決めます。
薬を替えた後に汗のかき方が大きく変わった人、普段から熱がこもる感じがする人、暑い場所で気分が悪くなった経験がある人は、その経験を先に伝えます。めまいや吐き気、頭痛がすでにある日は、温かい部屋で動く予定を取りやめます。練習条件の比較は、次のように参加前に確かめられる項目へ置き換えられます。
| 比べる項目 | 負担を増やしやすい条件 | 選ぶ際に確かめる条件 |
|---|---|---|
| 室内環境 | 加温し、湿気が多く、熱さを逃がしにくい | 加温せず、必要に応じて冷房を使える |
| 動きの調整 | 全員が同じ動きを続ける | 座る、動きを小さくする、中止する選択がある |
| 休む場所 | 暑い室内で休憩するだけ | 涼しい場所へすぐ移動できる |
| 飲み物 | 手元になく、途中で取りに行きにくい | 体調に合わせて飲める場所に置ける |
| 助けの求め方 | 不調を伝える相手が曖昧 | 中止の合図と声をかける相手が決まっている |
相談の場では「ヨガをしたい」だけでなく、「部屋を加温する」「立った姿勢を続ける」「途中で退室できる」などの条件を説明します。名前が同じヨガでも、動きの強さや熱の負担は変わります。選ぶ基準を汗の量から具体的な環境へ移すと、自分が無理をしそうな場面を事前に減らせます。
家族と一緒に検討するときは、本人が続けたいことと、困っている症状を分けて聞きます。「薬を飲んでいるから何もできない」とまとめず、涼しい環境や休みやすい形式を医療者と検討します。本人が中止を言い出しにくい場合は、途中で帰ることも含めて参加前に決めておきます。
薬の名前と汗の変化を持って相談する
薬剤師か主治医に相談するときは、お薬手帳や薬の袋を使い、現在の薬を一緒に確認します。毎日飲む薬に加え、眠れないときなど必要なときだけ使う薬も伝えます。市販薬やサプリメントを使っている場合も、処方薬と分けずに知らせます。薬名を覚えていなくても、手元の記録を見せれば説明を始められます。
汗については、多いか少ないかに加え、どこに、いつ、どのように現れるかを伝えます。「動いている間だけ顔に汗が出る」「涼しい室内でも着替えが必要になる」など、場面があると会話が進みます。練習中の変化なら、部屋の暑さ、動きの強さ、一緒に出た症状も添えます。原因を自分で決めるより、起きたことをそのまま記録するほうが役立ちます。
Marcy(2005)は、抗うつ薬による発汗への対応を、患者ごとに検討する考え方を示しています。薬の量や種類の変更は、症状を抑える利益と副作用を医師が比べて決める事項です。汗を減らすために自己判断で薬をやめたり、減らしたり、練習の日だけ抜いたりしません。飲む時刻をずらして暑さを避けようと考えた場合も、先に処方元へ確認します。
Mago(2013)では、過剰な発汗に対する薬による治療で改善の可能性が示された一方、めまいや立ちくらみも報告されています。汗の問題にも診療で検討する選択肢があるという意味で読み、薬を自分で追加する材料にはしません。相談後は、参加を見合わせる条件と、不調が出たときの連絡先を手元に残します。運動に合わせて治療を動かすより、治療の方針を確かめたうえで活動の環境を整えます。
練習中は症状で止まり、涼しい場所へ移る
めまい、吐き気、頭痛、強いだるさ、体が熱いのに汗が出ない状態は、暑さによる不調を疑って練習を止める合図です。「汗をかく運動だから普通」と片づけず、指導する人や周囲へ声をかけます。汗が出ている場合も同じ症状に注意します。体調の悪化を、運動が効いている感覚として扱わないことが大切です。
中止したら涼しい場所へ移り、衣服をゆるめて体を冷やします。意識がはっきりして自分で飲める場合は、水分を補います。自力で飲めない、呼びかけへの反応がおかしい、倒れたなどの場合は、すぐに救急を要請します。そのような状態の人に無理に飲ませず、周囲が助けを呼び、冷却を続けます。
休んでも改善しない症状や、繰り返す不調は、医療機関に相談する理由になります。症状が出た場面、服用した薬、休んだ後の変化を伝えます。暑い部屋で発生した症状をすべて薬の副作用と決めず、体の状態を診てもらいます。医療者の判断を受けるまでは、同じ環境へ戻って耐えられるか試すことを控えます。
帰宅までの移動も、その日の暑さへの負担に含めて考えます。気分が悪い状態で急いで帰ろうとせず、まず涼しい場所で助けを求めます。家族や同行者には、本人がいつもと違う反応をしたときに声をかけてもらうよう伝えておきます。練習を最後まで終えることより、異変の段階で中止できる段取りを優先します。
よくある質問
汗が増えたなら、体温を下げる力も強くなっていますか
薬による汗の増加と、暑さに耐える力の向上は同じ意味ではありません。汗が蒸発しにくい環境では体の熱を逃がしにくくなり、たくさん汗をかいていても体調が悪くなることがあります。汗の量を目標にせず、いつもの発汗との違い、熱さ、めまい、吐き気などを合わせて見ます。日常生活でも汗が気になる場合は、抗うつ薬の副作用について薬剤師や主治医に相談します。
薬を飲む時刻と練習を離せば、高温のヨガに参加できますか
服用時刻だけを動かして参加の可否を決めることは避けます。薬の種類や処方の目的が違うため、薬名と練習の環境を伝えて相談する必要があります。自分で薬を抜いたり減らしたりせず、まず加温しない練習や休みやすい形式を検討します。相談のときは、毎日使う薬と必要なときだけ使う薬の両方をお薬手帳などで示すと、服用状況を共有しやすくなります。
家族や指導する人には、病名まで伝える必要がありますか
運動の場では、本人が伝えられる範囲で、暑さへの配慮が必要なことと中止の合図を共有します。薬の詳細な確認は、薬剤師や主治医と行います。周囲には「めまいが出たら声をかける」「涼しい場所へ移るときに手を貸してほしい」など、必要な行動を具体的に伝えます。本人の説明する負担も考え、相談相手と共有する内容を先に決めておくと準備が進めやすくなります。
この記事の限界
測定されたのは、熱波の際の受診や死亡、少人数の男性の体温変化、抗うつ薬による発汗などで、対象者と調べた結果に偏りがあります。これらから、日本で服薬中の人がヨガを行う際の安全な室温や練習時間、加温したヨガの有効性を定めることはできません。
研究の紹介は、個人の処方や運動の可否を決める医療上の助言に代わるものではなく、薬剤師や主治医と相談するための材料です。暑い場所でめまい、吐き気、頭痛が出たら中止して涼しい場所へ移り、改善しない場合は受診し、意識の異常や自力で飲めない状態なら救急につなぎます。薬の名前と暑い場所での体調の変化を、次の診察や薬局で伝える準備はできていますか。
参考文献
- Martin-Latry ほか. Psychotropic drugs use and risk of heat-related hospitalisation. Eur Psychiatry. 2007;22(6):335-338.
- Hermesh ほか. Heat intolerance in patients with chronic schizophrenia maintained with antipsychotic drugs. Am J Psychiatry. 2000;157(8):1327-1329.
- Kaiser ほか. Heat-related death and mental illness during the 1999 Cincinnati heat wave. Am J Forensic Med Pathol. 2001;22(3):303-307.
- Bulbena ほか. [Impact of the summer 2003 heat wave on the activity of two psychiatric emergency departments]. Actas Esp Psiquiatr. 2009;37(3):158-165.
- Marcy ほか. Antidepressant-induced sweating. Ann Pharmacother. 2005;39(4):748-752.
- Mago ほか. Antidepressant-induced excessive sweating: clinical features and treatment with terazosin. Ann Clin Psychiatry. 2013;25(3):186-192.
足の裏から温まる床の上で、自分の呼吸の速さを一度確かめてみる
- 向く人: 温かい部屋で汗をかきながら、呼吸に合わせて体をゆっくり動かしたい人
- 向く人: 流派の名前より先に、暑さの中で自分の体がどう反応するかを知りたい人
- 向かない人: 妊娠中や心臓・腎臓の持病で、医師から高温の場所での運動を止められている人
- 向かない人: 暑さで気分が悪くなりやすく、室温の高い部屋そのものを避けたい人
このサイトはオンザショア立川店の運営者が制作しています。オンザショア立川店は立川駅から徒歩1分、溶岩プレートの床で部屋を温めるヨガスタジオです。
よくある質問
汗が増えたなら、体温を下げる力も強くなっていますか
薬による汗の増加と、暑さに耐える力の向上は同じ意味ではありません。汗が蒸発しにくい環境では体の熱を逃がしにくくなり、たくさん汗をかいていても体調が悪くなることがあります。汗の量を目標にせず、いつもの発汗との違い、熱さ、めまい、吐き気などを合わせて見ます。日常生活でも汗が気になる場合は、抗うつ薬の副作用について薬剤師や主治医に相談します。
薬を飲む時刻と練習を離せば、高温のヨガに参加できますか
服用時刻だけを動かして参加の可否を決めることは避けます。薬の種類や処方の目的が違うため、薬名と練習の環境を伝えて相談する必要があります。自分で薬を抜いたり減らしたりせず、まず加温しない練習や休みやすい形式を検討します。相談のときは、毎日使う薬と必要なときだけ使う薬の両方をお薬手帳などで示すと、服用状況を共有しやすくなります。
家族や指導する人には、病名まで伝える必要がありますか
運動の場では、本人が伝えられる範囲で、暑さへの配慮が必要なことと中止の合図を共有します。薬の詳細な確認は、薬剤師や主治医と行います。周囲には「めまいが出たら声をかける」「涼しい場所へ移るときに手を貸してほしい」など、必要な行動を具体的に伝えます。本人の説明する負担も考え、相談相手と共有する内容を先に決めておくと準備が進めやすくなります。