- 腱板は、肩の深いところにある4つの筋肉の腱がまとまった部分です。
- 理学療法は、体の動きや筋力を評価し、運動などを使って生活のしやすさを目指す治療です。
- Moosmayer(2019)は、大きさが3センチメートルを超えない腱板断裂の103人を、最初に腱を縫う手術と、必要に応じて後から手術へ移れる理学療法に分けました。
- Page(2016)のコクランレビューは、腱板の病気に対する徒手療法と運動を扱っています。
肩の腱板のけがとヨガ|腱板断裂の運動の研究と、腕で体を支えるポーズ
職場の休憩室で、棚のカップに手を伸ばしたところ、肩の奥に痛みが走る。病院で腱板が切れていると説明されると、仕事の後に続けていたヨガも休むべきか迷います。手術をせずにヨガを続けてよいのか、腕で体を支える姿勢はどう変えればよいのでしょうか。断裂があるだけでヨガを一律に禁止するのではなく、肩の診察と経過観察を受けながら、腕に体重をかける練習を個別に見直すことが出発点です。
腱板は肩の深いところにある筋肉の腱で、腕を動かすときに関節を支えています。断裂には痛みのないものもあり、手術をしない治療が選ばれることもあります。一方で、今の痛みが軽いことと、今後も同じ状態が続くことは別の問題です。診断名を聞いたときは、裂けた部分の状態に加え、日常で何に困っているかを医師と共有する必要があります。
腱板断裂の人にヨガを試して効果や安全性を調べた研究は、今回扱う文献では見つからなかったため、根拠の中心は理学療法と手術の比較です。以下では、その比較とヨガに関連したけがの報告を読み、診察で相談する動きへつなげます。ポーズを完成させることより、肩に何をさせるかを具体的にすることが大切です。
腱板断裂があっても、痛みの出方は同じではない
腱板は、肩の深いところにある4つの筋肉の腱がまとまった部分です。筋肉の力を骨へ伝えるとともに、腕を上げたり回したりする際に肩の関節を安定させます。腱板断裂とは、その腱の一部または厚み全体に切れ目ができた状態を指します。全層断裂という言葉は、腱の厚みを貫く断裂を表し、肩の腱がすべて切れているという意味ではありません。
Minagawa(2013)は、日本のある村の住民検診で、664人のうち147人、22.1%に全層断裂を認めました。断裂のある人のうち、症状がある人は34.7%、症状がない人は65.3%でした。年齢が上がるほど断裂の割合も高くなる結果で、画像に切れ目が写ることと、生活で痛みを感じることを分けて見る必要があります。こうした住民調査は、受診するほど困っている人以外にも断裂があることを示しています。
Yamamoto(2010)の日本の住民調査でも、調べた肩の20.7%に全層断裂がありました。現在症状のない人でも16.9%に断裂が見つかり、年齢や利き腕、けがの経験との関連が報告されています。検査の結果だけで運動の可否を決めるより、腕を上げる力や日常動作を診察で確かめることが重要です。本人が感じる不自由と画像の情報を合わせると、練習で避けたい負担を相談しやすくなります。
たとえば、カップは持てても、棚の高さまで腕を上げると痛む場合があります。手を床につくと痛む人と、腕を後ろに引くと痛む人では、変える必要のある場面が異なります。「肩が悪い」という説明に加えて、痛む向き、力が抜ける感じ、眠りへの影響を伝えると、ヨガの動きを具体的に検討できます。
手術をしない治療と手術を比べた研究
理学療法は、体の動きや筋力を評価し、運動などを使って生活のしやすさを目指す治療です。手術以外の治療をまとめて保存療法と呼びますが、単に放置することとは違います。肩にどのような運動を行い、いつ状態を見直すかを医療者と決めて進めます。ヨガを続けたい場合も、この治療計画の中に普段の活動として位置づけると相談が具体的になります。
Kukkonen(2015)は、明らかなけがのきっかけがない高齢者の棘上筋断裂を調べました。棘上筋は腱板を構成する筋肉の一つで、試験では理学療法だけ、骨を削る手術を加える方法、腱を縫う手術を加える方法を比べています。参加者を偶然に左右される方法で群に分けるランダム化比較試験で、治療前の条件の偏りを抑える設計です。肩の痛みや働きの成績には、2年後の時点で群の間に統計的に明らかな差がありませんでした。
痛み、動かせる範囲、筋力などをまとめるConstantスコアの平均の改善は、理学療法群で18.4点、骨を削る手術を加えた群で20.5点、腱を縫う手術を加えた群で22.6点でした。それぞれの95%信頼区間は14.2〜22.6点、16.4〜24.6点、18.4〜26.8点で、これは結果の推定に伴う幅を示します。著者らは、この条件の患者では保存療法を最初の選択肢にすることが合理的だとしています。運動を選ぶ際には、治療の名前だけでなく、対象が加齢に伴う特定の腱の断裂だった点も押さえます。
診察で保存療法を提案されたら、日常で目指す動作を伝えておくと役立ちます。着替えを楽にしたいのか、腕を上げて仕事をしたいのか、床に手をつく運動へ戻りたいのかで、確かめる動きが変わります。医療者が処方した運動の内容を保ち、その日の気分で強い負荷を上乗せしないようにします。
長期の成績と、断裂が広がる経過も見る
Moosmayer(2019)は、大きさが3センチメートルを超えない腱板断裂の103人を、最初に腱を縫う手術と、必要に応じて後から手術へ移れる理学療法に分けました。10年後の結果では、最初に手術を受けた群の成績が上回り、群の差も以前より大きくなりました。短い期間の痛みや機能に注目した試験と、長い期間の経過を見た試験では、見える結果が異なります。手術をせずに過ごせている人も、今の治療方針を定期的に確かめる理由があります。
この研究を読むときは、手術か運動かをその場で決めるための多数決にしないことが大切です。断裂の大きさや発症の経緯、日常で必要な力、本人の希望を医師と照らし合わせます。ヨガの姿勢ができたことだけをもって、肩全体の経過が良いと判断しないようにします。仕事や着替え、睡眠も含めて状態を見れば、治療の目標を共有しやすくなります。
Kwong(2019)は、手術をしていない全層断裂の進行を扱う8研究、411の断裂をまとめました。症状のない群では46.8か月で40.6%、症状のある群では37.8か月で34.1%に進行が見られ、群の間に明らかな差は検出されませんでした。追跡の長さはそろっておらず、著者らは短期から中期では多くの断裂に大きな進行がないとまとめています。痛みがなくても経過を見ることと、必ず広がると思い込まないことの両方が必要です。
定期診察では、前回から何が変わったかを伝えます。持てていた物が持ちにくい、上着に腕を通しづらい、眠る姿勢が限られるといった変化は、練習の回数よりも生活の情報として役立ちます。痛みだけでなく力や動きの変化を記録すると、医師が再評価する際の手掛かりになります。
運動の効果と、ヨガに関連したけがの読み方
Page(2016)のコクランレビューは、腱板の病気に対する徒手療法と運動を扱っています。徒手療法とは、施術者が手で関節や筋肉に働きかける方法で、このレビューには60試験、3620人が含まれました。ただし、通常の診療に近い組み合わせを、治療らしく見せた比較用の方法と比べた試験は限られています。その比較では、痛みや機能について本人にとって重要な差は示されず、運動の効果を大きく見積もらない読み方が必要です。
治療を受けた後に楽になったという変化には、時間の経過や治療への期待なども重なります。比較群を置く研究は、そうした変化と治療そのものの働きを見分けるために行われます。Page(2016)では、徒手療法と運動の群で、一時的な痛みなどの軽い有害事象も比較群より多く報告されました。「体を動かす方法だから負担がない」と考えず、治療中の反応を伝える姿勢が大切です。
Lee(2019)は、ヨガが原因とされたけがで医療機関を受診した89人の記録をまとめ、6人、6.7%に腱板のけがを認めました。これは受診した人を集めた症例集で、ヨガを行う人全体に対する発生率は示していません。肩を傷める例があることを踏まえ、既に断裂を指摘されている人は、痛みを押して体を支える練習を続けないようにします。
腕に体重を預ける姿勢では、手から伝わる力を肩でも受け止めます。腕を上げる動きに余裕があっても、床を押して体を持ち上げる動きでは負担のかかり方が変わります。痛む姿勢は外します。これを練習中の判断に組み込み、痛みを消すために繰り返し試すことを避けます。
腕で支えるポーズは、負担の役割から変更する
変更を考える際は、腕が体重を支えるのか、頭上へ伸びるのか、背中側へ引かれるのかを分けます。見た目が小さな動きでも、肩に力を入れ続ける姿勢はあります。以下は研究で効果を比べた手順ではなく、診察で許可された範囲を守るための一般的な工夫です。指導者には病名に加え、医師から伝えられた制限と、痛みの出る場面を共有します。
| 姿勢 | 肩に求められる動き | 相談したい変更案 |
|---|---|---|
| チャトランガ | 肘を曲げ、腕で体を低い位置に支える | 動作を省き、椅子に座って呼吸を整える姿勢へ替える |
| 下向きの犬 | 頭上に近い位置の腕で床を押し、体重の一部を支える | 腕で支える形を外し、椅子に座って手を太ももに置く |
| 板のポーズ | 腕を伸ばして床を押し、体を保つ | 床で支える姿勢を外し、腕を下ろした安定した立位に替える |
| 腕を後ろで組む姿勢 | 腕を背中側へ引き、肩を伸ばす | 手を組まずに体の横へ下ろし、肩を引っ張らない |
ポーズの入り方と終わり方も含めて変更します。たとえば、休むために座ろうとして、痛む側の手を床につき体を支えることがあります。床へ移ること自体が負担なら、最初から安定した椅子で行う内容を選びます。休止の姿勢を先に決めておくと、流れに合わせるために肩へ力を入れる場面を減らせます。
壁や椅子に手をつく形も、肩に力を伝える姿勢です。支える面を高くするだけで再開を決めず、医療者と動作を確かめます。腕を使わない姿勢でも、ふらつけばとっさに手をつくため、足元が安定する内容を選びます。続けたい内容を説明する際は、ポーズの名前に加えて、どこに手を置き、体のどの部分を支えるかまで伝えると具体的です。
再開前と練習当日に確かめること
腕が急に上がらなくなった場合は、ヨガを中止し、早めに整形外科で診察を受けます。転倒や強く引っ張られた後の変化、急に力が入らなくなった状態は、以前からの症状と分けて伝えます。夜も痛んで眠りが妨げられる場合も、練習で伸ばして様子を見続けず、診察で相談します。診断がついている人でも、新しい症状が出たら治療方針を見直す機会になります。
再開前には、腕で体を支えてよいか、頭上や背中側へどこまで動かしてよいかを医師や理学療法士に確かめます。手術を受けている場合は、手術後の保護とリハビリの指示が優先されます。普段の服を着る動作ができることと、体重をかける姿勢へ戻れることを分けて相談します。指示が曖昧に感じられたら、行いたい姿勢の写真や動作の説明を使うと、必要な条件を確かめやすくなります。
当日は、始める前の痛みと腕の動かしやすさを覚えておき、終わった後の生活動作と比べます。練習中に鋭い痛みや力の抜ける感じがあれば、その動きを中断します。帰宅後や就寝時に痛みが増えた場合も、負担を増やさず、どの動きの後だったかを医療者に伝えます。記録するのは出来栄えよりも、肩の反応です。
肩の状態が落ち着かず、休止や変更が必要な時期には、温かい部屋でのヨガを勧めません。一般的な配慮として、汗で手が滑りやすい環境や、暑さで疲れて姿勢を保ちづらい状況を避けます。暖かさで動きやすく感じても、それを肩へかける負担を増やす理由にはしないようにします。室温を上げる工夫より、肩の反応を見て落ち着いて中断できる環境を優先します。
よくある質問
痛みがなければ、いつものヨガを続けてもよいですか
無症状の断裂は住民調査でも見られますが、再開は画像、筋力、必要な動作を合わせて決めます。痛みだけを頼りに、板のポーズのような体重を支える姿勢へ戻るのは避けます。今までの練習内容を医師に伝え、腕を下ろす姿勢と腕で支える姿勢を分けて相談します。経過観察の予定を保ちながら、許可された範囲で内容を選びます。
肩を伸ばすほど、断裂の回復に役立ちますか
強く伸ばすことを目標にせず、処方された運動の目的と範囲に沿って動きます。特に腕を背中で組んで引く姿勢は、痛む肩に張りを感じても押し進めないようにします。指導者に体を押してもらうことも避け、医療者が確認した動かし方を共有します。着替えなどの動作が前より楽かどうかを伝えると、運動内容の見直しにつながります。
手術を勧められたら、ヨガをやめるしかありませんか
手術の必要性と、今後どんな活動へ戻りたいかを一緒に相談します。保存療法と手術の比較には異なる経過があり、仕事や生活で必要な肩の働きも判断に関係します。手術後は修復した部分を守る時期を含め、担当の医療者が示す段階に沿って復帰を考えます。ヨガという名前だけで可否を決めず、戻りたい動作を具体的に伝えます。
この記事の限界
対象は日本の住民検診、主に海外の治療試験、受診した人のけがの記録と幅があり、断裂の状態や追跡期間、比較した治療も異なるため、ヨガの継続へそのまま当てはめられない部分があります。腱板断裂に対するヨガや温かい環境の効果、ポーズ別の安全性、日本人のヨガ参加者の長期経過については、ここで扱った研究では検証されていません。本稿は研究を読むための解説であり、個人の診断や運動処方を行う医療の助言ではありません。腕が急に上がらない、夜も痛むときは整形外科で状態を確かめ、練習の再開と経過観察を担当の医療者と具体的に決めていきます。腕で体を支える動きのうち、診察で具体的に確かめたい姿勢はどれですか。
参考文献
- Minagawa ほか. Prevalence of symptomatic and asymptomatic rotator cuff tears in the general population: From mass-screening in one village. J Orthop. 2013;10(1):8-12.
- Yamamoto ほか. Prevalence and risk factors of a rotator cuff tear in the general population. J Shoulder Elbow Surg. 2010;19(1):116-120.
- Kukkonen ほか. Treatment of Nontraumatic Rotator Cuff Tears: A Randomized Controlled Trial with Two Years of Clinical and Imaging Follow-up. J Bone Joint Surg Am. 2015;97(21):1729-1737.
- Moosmayer ほか. At a 10-Year Follow-up, Tendon Repair Is Superior to Physiotherapy in the Treatment of Small and Medium-Sized Rotator Cuff Tears. J Bone Joint Surg Am. 2019;101(12):1050-1060.
- Kwong ほか. Full-Thickness Rotator Cuff Tears: What Is the Rate of Tear Progression? A Systematic Review. Arthroscopy. 2019;35(1):228-234.
- Page ほか. Manual therapy and exercise for rotator cuff disease. Cochrane Database Syst Rev. 2016;(6):CD012224.
- Lee ほか. Soft Tissue and Bony Injuries Attributed to the Practice of Yoga: A Biomechanical Analysis and Implications for Management. Mayo Clin Proc. 2019;94(3):424-431.
足の裏から温まる床の上で、自分の呼吸の速さを一度確かめてみる
- 向く人: 温かい部屋で汗をかきながら、呼吸に合わせて体をゆっくり動かしたい人
- 向く人: 流派の名前より先に、暑さの中で自分の体がどう反応するかを知りたい人
- 向かない人: 妊娠中や心臓・腎臓の持病で、医師から高温の場所での運動を止められている人
- 向かない人: 暑さで気分が悪くなりやすく、室温の高い部屋そのものを避けたい人
このサイトはオンザショア立川店の運営者が制作しています。オンザショア立川店は立川駅から徒歩1分、溶岩プレートの床で部屋を温めるヨガスタジオです。
よくある質問
痛みがなければ、いつものヨガを続けてもよいですか
無症状の断裂は住民調査でも見られますが、再開は画像、筋力、必要な動作を合わせて決めます。痛みだけを頼りに、板のポーズのような体重を支える姿勢へ戻るのは避けます。今までの練習内容を医師に伝え、腕を下ろす姿勢と腕で支える姿勢を分けて相談します。経過観察の予定を保ちながら、許可された範囲で内容を選びます。
肩を伸ばすほど、断裂の回復に役立ちますか
強く伸ばすことを目標にせず、処方された運動の目的と範囲に沿って動きます。特に腕を背中で組んで引く姿勢は、痛む肩に張りを感じても押し進めないようにします。指導者に体を押してもらうことも避け、医療者が確認した動かし方を共有します。着替えなどの動作が前より楽かどうかを伝えると、運動内容の見直しにつながります。
手術を勧められたら、ヨガをやめるしかありませんか
手術の必要性と、今後どんな活動へ戻りたいかを一緒に相談します。保存療法と手術の比較には異なる経過があり、仕事や生活で必要な肩の働きも判断に関係します。手術後は修復した部分を守る時期を含め、担当の医療者が示す段階に沿って復帰を考えます。ヨガという名前だけで可否を決めず、戻りたい動作を具体的に伝えます。