- 汗腺とは、皮膚の中にあり汗をつくって外へ送り出す器官です。
- Czarnowski(1991)は、全力より低い強度で自転車運動を行い、汗中アンモニアを調べました。
- Meyer(2007)は、暑い環境で自転車運動を行った子どもと成人を調べ、年齢や性別による汗の成分の違いを検討しました。
- 「汗で毒素を出す」という説明には、汗から有害な元素が検出された研究が使われることがあります。
ホットヨガの汗のにおい|アンモニア臭の正体と「汗で老廃物を出す」説
ホットヨガでかいた汗がアンモニアのようににおうとき、体の中で何が起きているのでしょうか。汗には血液に由来するアンモニアが含まれますが、においの強さから体の異常や老廃物の排出量を判断することはできません。 汗の成分を測った研究はあるものの、ホットヨガ中のアンモニア臭を人がどの程度感じるかまで直接調べた研究は、今回確認した資料には含まれていません。
「いつもよりにおうのは、不要なものがたくさん出たから」と受け止めると、汗を増やすために暑さを我慢してしまうかもしれません。逆に「におったから内臓に問題がある」と考えるのも、研究からは飛躍があります。成分が汗に入る仕組み、汗として外に出た量、その結果としての健康への影響は、それぞれ別に確かめる必要があります。
この記事では、運動中の汗を測った実験と、汗腺や有害物質の排出に関する研究を読み分けます。立川でホットヨガを検討している人も、すでに通っていてにおいが気になる人も、汗を練習の成果として採点する必要はありません。急な変化や尿の異常がある場合は、汗のにおいの解釈よりも体調の確認を優先する、という順序で考えていきます。
汗の役割と、アンモニアが入る経路
汗腺とは、皮膚の中にあり汗をつくって外へ送り出す器官です。Baker(2019)の総説では、汗の中心的な役割は体温の調節として整理されています。汗が皮膚の表面から蒸発するときに熱が奪われるため、汗をかくことと、体が適切に冷えることの関係が大切になります。服がぬれた程度やにおいだけでは、体温調節が十分にできているかまではわかりません。
アンモニアは、体内でたんぱく質などを利用する過程にも関わる、窒素を含んだ物質です。Czarnowski(1992)は、血漿、つまり血液の液体成分にあるアンモニアが、汗中アンモニアの主な供給源であることを示しました。健康な人だけでなく、塩化アンモニウムを摂取した条件や、肝硬変、尿毒症のある人を含めて仕組みを検討した研究です。病気のある群を調べたことは、汗にアンモニアがあれば病気だという意味ではありません。
血液に由来する成分でも、汗に出たときの濃度が血液の濃度をそのまま写すとは限りません。濃度とは一定量の液体に含まれる成分の多さであり、体から出た総量とは別の値です。汗腺での働きや汗の出方を介して皮膚の表面に到達するので、汗は採血検査の代わりにそのまま使える液体ではない、と理解するとよいでしょう。
また、アンモニアという成分の説明と、自分が感じた「アンモニアのようなにおい」の原因の特定も分けて考えます。ここで紹介する実験は、主として採取した汗の化学成分を測っています。日常のにおいを嗅いで成分を確定した研究ではないため、感じたにおいのすべてをアンモニアで説明することはできません。汗を出す仕組みがわかっていても、その場のにおいを診断できるわけではありません。
運動を強くすると、汗のアンモニアは増えるのか
Czarnowski(1991)は、全力より低い強度で自転車運動を行い、汗中アンモニアを調べました。運動強度や周囲の温度を変えて比較したところ、汗のアンモニア濃度は条件によって異なりました。運動で生じたアンモニアの一部が汗に出ることを示す実験ですが、においが軽くなる練習法や、ホットヨガの健康効果を試したものではありません。
これに対してKlous(2021)の12名の研究では、運動強度が上がると血中アンモニアは増えた一方、汗中アンモニアの濃度は下がりました。血液と汗で調べた成分の組み合わせの多くでは、統計的に明確な相関も認められませんでした。相関とは、ある値が増減すると別の値も一定の関係で増減することです。血液で増えた物質が汗でも必ず濃くなる、という単純な関係ではなかったのです。
この違いを「どちらかの研究が間違っている」と急いで解釈する必要はありません。比べた運動条件や汗の採り方が同じでなければ、結果をそのまま重ねることはできません。少なくとも、強く動くほど汗のアンモニア濃度が一律に高くなるとは言えず、汗の濃さだけから運動のきつさを逆算することもできません。研究の結果を、自分の汗のにおいを採点する表に変えるのは難しいのです。
さらに、これらは健康効果の大きさを比較する試験ではありません。何もしない人とホットヨガをする人を比べ、体内の有害物質や体調がどれほど変わったかを示す効果量は得られていません。汗の成分が変わったという生理的な反応と、本人にとって意味のある利益は異なります。「運動で出た」という結果には根拠があっても、「もっと出せば健康になる」という結論を付け加えることはできません。
年齢や性別の違いを、においの良し悪しにしない
Meyer(2007)は、暑い環境で自転車運動を行った子どもと成人を調べ、年齢や性別による汗の成分の違いを検討しました。最初の運動区間では、子どもの汗中アンモニア濃度が成人より高いという結果でした。女児、男児、成人女性、成人男性の値が報告されていますが、その並びだけで、日常の汗のにおいや健康状態の順位をつけることはできません。
この研究から読み取れるのは、汗の成分を考えるときに対象者の特徴を無視できない、ということです。成人のホットヨガ参加者と子どもの自転車運動では、体の条件も運動の内容も異なります。男女の測定値が違っていても、それがにおいの感じ方の差として現れるかは別途調べる必要があります。「男性だから必ず強くにおう」「年齢を重ねるほど汗が悪くなる」といった説明は、この研究の結論ではありません。
研究で測ったものと、生活の中で知りたいことを分けると、次のようになります。表の右側は、研究が役に立たないという意味ではありません。測定結果から言える範囲を越えずに使うための境界です。
| 研究や観察の対象 | わかること | そこからは決められないこと |
|---|---|---|
| 血液と汗のアンモニア | 成分の由来や条件による変化 | においだけによる血液の状態 |
| 年齢・性別の異なる群 | 特定の実験条件での濃度の違い | 個人の清潔さや健康の優劣 |
| 汗に含まれる有害元素 | 採取した試料に存在すること | 体内の蓄積量が十分に減ったか |
| 自分が感じたにおい | 気になった時点や状況 | 原因物質の特定や病気の診断 |
周囲と比べて汗のにおいが気になることはあっても、それを「体の中が汚れている」という評価につなげないことが大切です。家族が気づいた場合も、においを責めるより、いつから変わったのか、ほかに不調がないかを確かめるほうが役立ちます。比較するなら他人の汗より、自分の普段の状態と今回の変化を、診断とは切り離して記録します。
汗から重金属が見つかることと、健康効果の距離
「汗で毒素を出す」という説明には、汗から有害な元素が検出された研究が使われることがあります。Sears(2012)の系統的レビュー、つまり条件を定めて先行研究を集めて検討する論文は、ヒ素、カドミウム、鉛、水銀の汗中への排出を扱いました。対象者も汗の採取方法も濃度も研究によって大きく異なり、安全で有効な方法を確立するには、適切な規模の試験が必要としています。
Genuis(2011)は、健康な人と健康上の問題がある人を含む20名で、血液、尿、汗に含まれる元素を調べました。発汗が有害元素を外へ出す手段になる可能性を示した、探索的な研究です。探索的とは、確かな実践方法を決める前に、検討する価値のある現象や仮説を探す段階を指します。汗への排出に着目した点は意味がありますが、ホットヨガを続ければ病気の危険が下がることを確かめた試験ではありません。
汗に成分があるとわかった後にも、確かめるべきことは残ります。どれほどの総量が出たか、体に入ってくる量と比べてどうか、体内の蓄積が持続的に減ったかを区別する必要があります。さらに、比較対象を置いて症状や健康上の経過が良くなったかまで調べて、初めて実際の利益を判断しやすくなります。汗中の濃度が高いという結果だけでは、この一連の疑問には答えられません。
Baker(2019)は、老廃物や有害物質を排出する汗の役割は、腎臓や消化管などの経路と比べて小さいと整理しています。大きな排出効果を示す報告には、測定方法に問題がある可能性も指摘しています。今回の根拠からは、発汗の健康効果を具体的な大きさで示すことも、必要な汗の量を決めることもできません。含まれることを認めながら、効果を大きく見せない読み方が必要です。
肝臓や腎臓の働きを、汗で置き換えない
肝臓はさまざまな物質を処理し、腎臓は尿をつくって不要なものを排出します。汗にもアンモニアが出ることは、これらの働きを代わりに担う証拠にはなりません。「老廃物」という説明に出会ったら、対象物質と測定方法を確かめる必要があります。
Klein(2015)は、有害物質の除去をうたう食事法の根拠を検討し、少人数や方法上の問題を指摘しました。商業的な食事法の有効性を調べる無作為化比較試験は、その総説の時点ではありませんでした。ホットヨガを調べた論文ではありませんが、何がどれだけ減り、健康にどう関係したかを問う読み方は共通します。においを減らすために発汗を増やすのではなく、運動として無理なく行えるかを判断の中心に置きます。
においが変わったときは、体調と経過を確かめる
においが気になっても、それだけで原因を決めず、まずいつもの体調と比べます。汗をかいたときだけなのか、運動していないときも続くのか、皮膚より衣服で気づくのかなど、状況を言葉にしておくと相談時に役立ちます。最近の食事や薬、体調の変化も、わかる範囲で記録しておきます。これは自分で原因を断定するためではなく、診察で必要な情報を伝えやすくするためです。
においが急に変わったり、変化が続いて気になったりする場合は、内科などで相談してください。尿が普段より明らかに少ない、血が混じる、排尿時に痛むなどの異常があるときは、運動を続けて汗の変化を見るより受診を優先します。においと尿の異常が同じ原因とは限りませんが、いっしょに生じた変化は伝える価値があります。汗のにおいが弱いから受診は不要、という判断もしないようにします。
暑い場所での運動には、脱水や体に熱がこもることによる不調の危険があります。めまい、吐き気、頭痛、強いだるさが出たら練習を中止し、涼しい場所で休み、周囲に助けを求めてください。意識がぼんやりする、倒れるなどの状態では、においの原因を調べるより救急の対応が先です。ここで扱った汗の成分研究からは、こうした有害事象が起こる頻度や、においによって予測できるかはわかりません。
腎臓や肝臓の病気がある人、医師から運動や水分について指示を受けている人には、自己判断で発汗を増やす方法は向きません。始める前に、暑い環境で運動することを含めて担当の医師に伝え、現在の病状で適切かを確かめます。練習の場でも、途中で休めるか、体調が悪いときにすぐ退出できるかを確認しておきます。においを消すことより、異変があれば負荷を減らせることを優先します。
よくある質問
アンモニアのようににおったら、腎臓が悪いのでしょうか
においだけでは腎臓の状態は判断できません。汗にアンモニアが含まれること自体は研究で示されていますが、においと病気の診断を結びつける基準は、今回の資料にはありません。急な変化が続く場合や、尿量の減少、排尿時の痛みなどを伴う場合は、その経過を医療機関に伝えてください。汗を増やしてにおいが変わるか試すことは、検査の代わりにはなりません。
汗をたくさんかけば、においも薄くなりますか
今回の研究から、発汗量を増やせばにおいが軽くなるとは言えません。Klous(2021)では運動強度が上がると汗中アンモニア濃度が下がりましたが、人が感じるにおいの改善を測った結果ではありません。濃度、排出の総量、においの感じ方は別の指標です。汗を増やすために暑さを我慢するより、いつどこで気になったかと、そのときの体調を確かめてください。
汗から重金属が出る研究があるなら、続ける意味はありますか
汗から検出されたという結果は、研究を進める手がかりになります。ただし、Sears(2012)やGenuis(2011)からは、ホットヨガを続けた場合の体内蓄積の減少や健康上の利益を確定できません。有害物質の除去を目的に、回数や暑さを増やす根拠にはならないのです。職場や生活環境で有害物質への接触を心配している場合も、汗で対処しようとせず、まず医療機関に相談します。
この記事の限界
採り上げた研究には、少人数の運動実験や観察研究、先行研究を整理した総説が多く、対象者や採取方法がそろっていません。運動中の短い変化を調べた結果から、長く続けた場合の健康効果は判断できず、においの知覚を直接評価した根拠も不足しています。日本人やホットヨガ環境での資料は乏しく、今回の根拠にはホットヨガ中のアンモニア臭を直接調べた研究は含まれません。
本稿は研究の読み方を整理したもので、個別の診断や医療の助言ではなく、急なにおいの変化や尿の異常は医療機関に相談してください。汗の成わから健康効果へ結びつける確実性にも限界があります。今の自分に必要なのは汗をさらに増やすことか、それとも普段と違う体調を確かめることでしょうか。
参考文献
- Czarnowski. Sweat ammonia excretion during submaximal cycling exercise. J Applied Physiology. 1991.
- Czarnowski. Plasma ammonia is the principal source of ammonia in sweat. Eur J Appl Physiol Occup Physiol. 1992.
- Klous. The (in)dependency of blood and sweat sodium, chloride, potassium, ammonia, lactate and glucose concentrations during submaximal exercise. Eur J Appl Physiol. 2021.
- Meyer. Effect of age and gender on sweat lactate and ammonia concentrations during exercise in the heat. Braz J Med Biol Res. 2007.
- Baker. Physiology of sweat gland function: The roles of sweating and sweat composition in human health. Temperature. 2019.
- Klein. Detox diets for toxin elimination and weight management: a critical review of the evidence. J Hum Nutr Diet. 2015.
- Sears. Arsenic, cadmium, lead, and mercury in sweat: a systematic review. J Environ Public Health. 2012.
- Genuis. Blood, urine, and sweat (BUS) study: monitoring and elimination of bioaccumulated toxic elements. Arch Environ Contam Toxicol. 2011.
足の裏から温まる床の上で、自分の呼吸の速さを一度確かめてみる
- 向く人: 温かい部屋で汗をかきながら、呼吸に合わせて体をゆっくり動かしたい人
- 向く人: 流派の名前より先に、暑さの中で自分の体がどう反応するかを知りたい人
- 向かない人: 妊娠中や心臓・腎臓の持病で、医師から高温の場所での運動を止められている人
- 向かない人: 暑さで気分が悪くなりやすく、室温の高い部屋そのものを避けたい人
このサイトはオンザショア立川店の運営者が制作しています。オンザショア立川店は立川駅から徒歩1分、溶岩プレートの床で部屋を温めるヨガスタジオです。
よくある質問
アンモニアのようににおったら、腎臓が悪いのでしょうか
においだけでは腎臓の状態は判断できません。汗にアンモニアが含まれること自体は研究で示されていますが、においと病気の診断を結びつける基準は、今回の資料にはありません。急な変化が続く場合や、尿量の減少、排尿時の痛みなどを伴う場合は、その経過を医療機関に伝えてください。汗を増やしてにおいが変わるか試すことは、検査の代わりにはなりません。
汗をたくさんかけば、においも薄くなりますか
今回の研究から、発汗量を増やせばにおいが軽くなるとは言えません。Klous(2021)では運動強度が上がると汗中アンモニア濃度が下がりましたが、人が感じるにおいの改善を測った結果ではありません。濃度、排出の総量、においの感じ方は別の指標です。汗を増やすために暑さを我慢するより、いつどこで気になったかと、そのときの体調を確かめてください。
汗から重金属が出る研究があるなら、続ける意味はありますか
汗から検出されたという結果は、研究を進める手がかりになります。ただし、Sears(2012)やGenuis(2011)からは、ホットヨガを続けた場合の体内蓄積の減少や健康上の利益を確定できません。有害物質の除去を目的に、回数や暑さを増やす根拠にはならないのです。職場や生活環境で有害物質への接触を心配している場合も、汗で対処しようとせず、まず医療機関に相談します。