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公開:2026年10月12日/最終更新:2026年10月12日

ヨガ教室で起きるけがと不調|日本の大規模調査と、指導者の事前確認の研究

「有害事象の多くは軽度で、クラスへの参加を妨げなかった」。Matsushita(2015)の日本の調査の抄録には、こう記されています(日本語訳)。一方で、受講後に何らかの不調を報告した人もいました。ヨガ教室でどんなけがや不調が起こるのか、通う前に知っておきたいのは、頻度だけでなく、その中身と教室の対応です。

この記事の要点
  • Matsushita(2015)は、日本のヨガ教室の受講者2508人と指導者271人を調べました。
  • 研究の比較では、国名より先に調べ方をそろえます。
  • Cramer(2019)のドイツの調査は横断調査と呼ばれ、ある時点で実践者に過去の経験などを尋ねたものです。
  • Lein(2020)は、米国北東部のヨガ指導者を対象に、受講者への事前確認や指導の実態を調べました。

ヨガ教室で起きるけがと不調|日本の大規模調査と、指導者の事前確認の研究

「有害事象の多くは軽度で、クラスへの参加を妨げなかった」。Matsushita(2015)の日本の調査の抄録には、こう記されています(日本語訳)。一方で、受講後に何らかの不調を報告した人もいました。ヨガ教室でどんなけがや不調が起こるのか、通う前に知っておきたいのは、頻度だけでなく、その中身と教室の対応です。

教室選びでは、けがの割合だけで安全を決めず、持病や痛みを事前に伝えられ、途中で休むことや身体への補助を断ることが尊重されるかを確かめます。 更衣室で袖を通そうとして、肩の痛みに気づく場面を考えてみます。着替えて帰る前に指導者へ伝えるのか、次の受講まで我慢するのかで、その後に共有できる情報は変わります。症状が軽く感じられても、いつ、どんな動きの後に出たかは相談の手掛かりになります。

研究には、その日の受講後に広く不調を尋ねたもの、救急外来に来たけがを集めたもの、過去の経験を振り返ったものがあります。同じ「ヨガに伴うけが」という言葉でも、数えている出来事は別です。まずこの違いを押さえ、そのうえで指導者の事前確認と、痛みが出たときの動き方を見ていきます。

日本の調査が数えたのは、けがだけではなく不調です

Matsushita(2015)は、日本のヨガ教室の受講者2508人と指導者271人を調べました。受講者には調査当日のクラスで起きた出来事を尋ね、指導者にはそれまでに受講者に見られた出来事を尋ねています。受講者の回答と指導者の経験は、異なる範囲を記録したものです。ここでいう有害事象は、クラス中に起きた望ましくない症状や反応を指します。

受講者のうち687人が、受講後の回答で何らかの望ましくない症状を報告しました。筋肉痛など、筋肉や関節に関係する症状が297件と最も多く、神経系の症状、呼吸に関係する症状が続きました。有害事象の63.8%は軽度で、クラス参加を妨げないものでした。骨折や入院を伴うけがだけを集めた統計とは、出発点が違います。

受講者の体調にも目を向ける必要があります。慢性の病気がある人は1343人(53.5%)、医療機関で薬による治療を受けている人は1063人(42.3%)でした。健康な初心者だけを集めた教室というより、さまざまな体の事情を持つ人が参加している調査です。指導者に伝える内容として、運動経験に加えて、普段の治療やその日の調子を考える理由がここにあります。

また、症状があったことと、ヨガがその症状を起こしたことは別の情報です。この調査は、受講者が経験した不調を拾う方法をとっており、同じ条件でヨガをしない人を置いて発生を比べる試験ではありません。数字を読むときは、まず「どんな症状まで含めたか」を確認します。日常の教室では、重いけがへの備えと、小さな不調を伝えやすくする工夫の両方が課題になります。

救急外来の件数と、アンケートの割合を比べる方法

研究の比較では、国名より先に調べ方をそろえます。アンケートは受診しなかった痛みや違和感も拾い、救急外来の記録は医療機関を訪れた出来事を拾います。さらに、調査当日の症状、長年の実践を振り返った経験、けがによる中断では、対象となる期間や結果が違います。下の表は安全性の順位ではなく、それぞれの数字が何を数えたかを並べたものです。

研究 対象・調べ方 主な報告 数字を読む焦点
Matsushita(2015)、日本 受講者2508人と指導者271人への調査 受講者687人が不調を報告 その日のクラスに伴う症状を広く尋ねる
Swain(2016)、米国 2001〜2014年の救急外来記録に基づく全国推計 ヨガ関連のけが29,590件 救急外来で扱われたけがの規模を見る
Sekendiz(2020)、豪州 ビクトリア州の2009年7月〜2016年6月の救急外来記録 ヨガ関連のけが118件 州内の受診例の特徴を見る
Cramer(2019)、ドイツ 実践者1702人への横断調査 急性の有害事象を364人(21.4%)が報告 過去の実践中に経験した症状を振り返る
Holton(2014)、米国 ヨガ経験者2230人を含む全国調査 けがが理由でやめた人は1%未満 けがの有無より、継続をやめた理由を見る

救急外来の記録から見えるけがの特徴

Swain(2016)では、けがの部位は体幹が46.6%、診断では捻挫や筋肉・腱などを傷める損傷が45.0%でした。体幹とは、手足や頭を除いた胴体の部分です。救急外来を受診するような痛みが、腕や脚だけでなく胴体にも起きていることが読み取れます。教室で動かす部位と、以前に傷めた部位を事前に照らし合わせる際の材料になります。

Sekendiz(2020)が集めた118件は、豪州全体ではなく、ビクトリア州の救急外来受診例です。女性は96人(81.4%)、20〜39歳は68人(57.6%)でした。ここで示されているのは受診例の構成であり、参加者全体の年齢や性別の構成とは区別して読む数字です。若い人の受診例も含まれるため、年齢が若いことだけを理由に、痛みの申告を省く必要はありません。

続けている人の痛みと、けがでやめた人の違い

Cramer(2019)のドイツの調査は横断調査と呼ばれ、ある時点で実践者に過去の経験などを尋ねたものです。1702人のうち364人(21.4%)が、急性の有害事象を報告しました。急性とは急に生じるものを指し、慢性とは長く続くものを指します。この研究では慢性の有害事象を173人(10.2%)が報告しており、突然の痛みと、続いている不調を分けて記録しています。

多くの報告は筋肉や関節などに関わるものでした。急性の事例の76.9%、慢性の事例の51.6%では、完全な回復が報告されています。これはそれぞれの事例について回答された回復状況で、これから参加する人の回復時期を示した数字ではありません。教室での相談では、痛みの強さだけでなく、長引いているか、受講のたびに繰り返すかも伝えると状況を共有しやすくなります。

一方、Holton(2014)の米国の全国調査では、ヨガ経験者2230人のうち、ヨガによるけがを理由に実践をやめた人は1%未満でした。「不調を経験した」と「その不調でヨガをやめた」は別の結果です。不調があっても続ける人がいれば、練習内容を変えて続ける人もいるため、中断の割合だけを不調全体の割合として扱うと意味が変わります。けがによる中断が少ないという結果と、教室で不調を拾う必要性は両立します。

Cartwright(2020)は、英国のヨガ実践者を対象として、動機や健康行動などを尋ねた調査です。このように研究の対象には、初めて受講する人だけでなく、すでに生活の中でヨガを続けている人も含まれます。通い続けていることと、痛みがないことは同じではありません。自分の状態を見るときも、出席できたかに加えて、着替えや歩行など普段の動作に影響が出たかを記録します。

指導者の事前確認は、何を聞くかまで見ます

Lein(2020)は、米国北東部のヨガ指導者を対象に、受講者への事前確認や指導の実態を調べました。質問票の回答率は46%で、回答した指導者のうち、身体の動作能力を確認していたのは8.8%、病歴など医学的な事項を確認していたのは33.7%でした。こうした確認はスクリーニングと呼ばれ、運動に入る前に注意が必要な事情を拾う作業です。病気の診断をつけることとは役割が異なります。

この数字は、教室に通えば必ず体の状態を細かく尋ねてもらえる、という思い込みを見直す材料になります。確認用紙があるかだけでなく、その内容を担当する指導者が読むか、実際の動きに反映するかまで見たいところです。過去のけがについて書いたのに、毎回同じ動作を求められるなら、受講前に対応を確かめます。書類を提出することと、動き方を相談することをつなげます。

伝える内容は、今痛い場所、以前に傷めた場所、医師から制限されている動き、普段の治療、その日の不調です。病名をほかの受講者の前で話したくない場合は、個別に伝える方法を尋ねます。何をどこまで共有するかを落ち着いて決められることも、教室を選ぶ条件になります。家族が付き添う場合も、本人が話したい内容を先に確認しておきます。

体の状態を伝えた後には、休める姿勢や参加を見送る動きについて、具体的な説明を聞きます。「無理をしない」という言葉だけで終わらず、痛みが出たらその動作を止めてよいか、途中で抜けるときは誰に知らせるかまで尋ねると判断しやすくなります。持病の治療中や、けがからの復帰中であれば、先に医療者と参加条件を相談します。指導者には、その条件に合わせた対応が可能かを確かめます。

手で支える補助には、同意と中止の合図を用意します

指導者が手を添え、姿勢を支えたり動きの方向を示したりする補助は、アジャストと呼ばれます。受ける側がどう感じているかを伝えることが、補助を続けるかどうかの判断に関わります。初めての教室では、触れられる前に説明があるか、補助を受けない選択が用意されているかを確かめます。周囲の受講者が受けていても、同じ対応を選ぶ必要はありません。

今回取り上げた研究群には、手による補助を受けた場合と受けない場合を直接比べて、けがの危険度を測った研究は含まれていません。したがって、補助があるという事実だけで安全や危険を判定するより、本人の同意と中止の伝え方を確認することが実用的です。「痛みを言えて、手による補助を断れる関係になっていますか」と、受講前に自分でも確かめます。これは危険度の数字を示す問いではなく、その教室で自分の意思を伝えられるかを見る問いです。

断るために、病名や長い説明を用意する必要はありません。今日は触れずに言葉で教えてほしい、痛みがあるのでその動きは休みたい、と短く伝える方法があります。いったん補助を受け入れた後でも、途中で気持ちや体の感覚が変われば止めてよいと確認します。受講前の同意を、最後まで我慢する約束にしないことが大切です。

痛みは、我慢比べにしません。

教室側の返答にも注目します。痛みを訴えたときに動作の中止や別の方法を提案するのか、同じ形を続けるよう求めるのかを見ます。自分の感覚を伝えても話が進まない場合は、その動作への参加を止め、受講方法を考え直します。姿勢の完成度より、意思を伝えたときの対応のほうが、初めての教室を選ぶ手掛かりになります。

当日の体調と、受講後の変化をつなげて考えます

参加前には、普段と違う痛みやだるさ、めまい、息苦しさがないかを見ます。すでに強い症状がある日は、運動で調子を整えようとせず、受講を見合わせて原因の確認を優先します。医師から運動を止められている人は、その指示を守ります。教室へ来られたことだけを、運動できる体調の証拠にはしません。

温かい部屋でのヨガについても、汗をかけば不調が軽くなるという前提では選びません。めまいや息苦しさがある日、発熱している日、暑さで具合が悪くなった経験がある人には、暑い環境で無理に受講することを勧めません。持病、妊娠、服薬などで参加条件に迷う場合は、主治医などに環境も含めて相談します。教室には運動内容だけでなく、室内環境や退出方法も確かめます。

受講中に鋭い痛みや新しいしびれが出たら、その動作を止め、指導者に知らせます。受講後も痛みが続く、腫れが出る、普段どおりに手足を使えない場合は、次のクラスで試し直す前に医療機関へ相談します。胸の痛み、強い息苦しさ、意識が遠のく感じがある場合は、その場で周囲に助けを求め、救急の判断につなげます。呼吸を整えれば必ず落ち着くと決めつけないことが大切です。

記録は、症状の場所、始まった動き、受講前からあったか、止めた後にどう変わったかを短く残します。医療機関では、その記録と普段の治療内容を伝えます。再開時には前回の症状を担当者と共有し、同じ動作を行うかどうかを相談します。毎回すべての姿勢を行うことより、体調の変化に合わせて参加方法を変えられることを重視します。

よくある質問

不調の報告が多いと、危険な教室という意味ですか

症状を広く尋ねた調査では、受診に至らない痛みや違和感も記録されます。Matsushita(2015)の日本の調査も、重いけがだけを数えたものではなく、参加を妨げない軽い症状を含んでいます。教室を判断するときは、報告の件数だけでなく、不調を伝えた際に休止や受診の相談につながるかを見ます。症状を申告しやすい仕組みと、その後の対応を合わせて確かめることが大切です。

初心者向けなら、持病や古いけがを伝えなくてもよいですか

初心者向けという名称と、自分の病状やけがに合った内容であることは別です。過去のけがでも、特定の動きで痛む、医師から避けるよう言われた姿勢がある、といった事情は先に伝えます。個別に話せる時間や方法を教室へ尋ね、担当する指導者に伝わるかを確かめます。参加条件について医療者に相談済みなら、その条件の範囲で対応してもらえるかを聞くと話が具体的になります。

手による補助を断ると、上達の妨げになりますか

補助を受けるかどうかは、自分の希望や体の状態に合わせて決めます。言葉で説明してもらう、見本を見て動くなど、自分が受け入れられる教わり方を相談します。途中で痛みが出た場合も、以前に補助を受けたことを理由に我慢する必要はありません。触れられることへの希望と、その日の体の感覚を伝え、納得できる方法で練習を続けます。

この記事の限界

適用範囲は、教室での自己申告、実践者の回想、救急外来の受診記録から、けがや不調の読み方を考えるところまでで、特定の教室や個人の危険度を予測するものではありません。日本の大規模調査を含む一方、調べた期間や参加者の病歴がそろっておらず、温かい部屋の初心者だけを比べた研究でもないため、国ごとの数字を安全性の順位に置き換えることはできません。この整理は個別の診断や医療上の助言に代わるものではなく、続く痛みや腫れ、しびれがあれば、受講の継続より医療機関への相談を優先します。教室選びでは、事前の体調確認と、症状が出たときに止められる対応を、自分の参加条件として確かめます。候補の教室では、痛いと伝えたり手による補助を断ったりしたとき、どのように対応してもらえますか。

参考文献

  1. Matsushita T, Oka T. A large-scale survey of adverse events experienced in yoga classes. Biopsychosoc Med. 2015;9:9.
  2. Swain TA, McGwin G. Yoga-Related Injuries in the United States From 2001 to 2014. Orthop J Sports Med. 2016;4(11):2325967116671703.
  3. Cramer H, et al. Adverse effects of yoga: a national cross-sectional survey. BMC Complement Altern Med. 2019;19(1):190.
  4. Lein DH, et al. Are screening by yoga instructors and their practice patterns important to prevent injuries in yoga clients? Complement Ther Clin Pract. 2020;40:101196.
  5. Sekendiz B. An epidemiological analysis of yoga-related injury presentations to emergency departments in Australia. Phys Sportsmed. 2020;48(3):349-353.
  6. Holton MK, Barry AE. Do side-effects/injuries from yoga practice result in discontinued use? Results of a national survey. Int J Yoga. 2014;7(2):152-154.
  7. Cartwright T, et al. Yoga practice in the UK: a cross-sectional survey of motivation, health benefits and behaviours. BMJ Open. 2020;10(1):e031848.

足の裏から温まる床の上で、自分の呼吸の速さを一度確かめてみる

  • 向く人: 温かい部屋で汗をかきながら、呼吸に合わせて体をゆっくり動かしたい人
  • 向く人: 流派の名前より先に、暑さの中で自分の体がどう反応するかを知りたい人
  • 向かない人: 妊娠中や心臓・腎臓の持病で、医師から高温の場所での運動を止められている人
  • 向かない人: 暑さで気分が悪くなりやすく、室温の高い部屋そのものを避けたい人

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よくある質問

不調の報告が多いと、危険な教室という意味ですか

症状を広く尋ねた調査では、受診に至らない痛みや違和感も記録されます。Matsushita(2015)の日本の調査も、重いけがだけを数えたものではなく、参加を妨げない軽い症状を含んでいます。教室を判断するときは、報告の件数だけでなく、不調を伝えた際に休止や受診の相談につながるかを見ます。症状を申告しやすい仕組みと、その後の対応を合わせて確かめることが大切です。

初心者向けなら、持病や古いけがを伝えなくてもよいですか

初心者向けという名称と、自分の病状やけがに合った内容であることは別です。過去のけがでも、特定の動きで痛む、医師から避けるよう言われた姿勢がある、といった事情は先に伝えます。個別に話せる時間や方法を教室へ尋ね、担当する指導者に伝わるかを確かめます。参加条件について医療者に相談済みなら、その条件の範囲で対応してもらえるかを聞くと話が具体的になります。

手による補助を断ると、上達の妨げになりますか

補助を受けるかどうかは、自分の希望や体の状態に合わせて決めます。言葉で説明してもらう、見本を見て動くなど、自分が受け入れられる教わり方を相談します。途中で痛みが出た場合も、以前に補助を受けたことを理由に我慢する必要はありません。触れられることへの希望と、その日の体の感覚を伝え、納得できる方法で練習を続けます。